『星を継ぐもの』三部作読了。 | 多弦Gutarist Tominha の部屋

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10弦・11弦という普通派では見ることがない多弦なギターを弾くギタリストTomonari.Cのブログ。音楽はもちろん、映画やら小説やら政治やら、思いつくままに書き連ねています。

大好きな星野之宣さんが漫画化して連載中なので、原作であるこの本、J・P・ホーガンの三部作『星を継ぐもの』『ガニメデのやさしい巨人』『巨人たちの星』を去年から読んでいて、昨日読了した。(ちなみに最終作の原題は「GIANT’s Star」=「巨人の星」ということになるのだが、それでは……ということで「たち」がはいったようです。
この話、漫画読んでる人はだいぶわかっていると思いますが、大体今から70年ほど先の近未来、月の裏側から高度な科学技術文明による「宇宙服」に身を包んだ「5万年前の人類」が発見されることから始まる。そしてその衝撃的な出来事の余韻もさめやらぬころ、今度は木製の衛星ガニメデで「太陽系外航行をしていたと思われる2500万年前の宇宙船」が発見される。そして、ついに人類はその宇宙船と同時代の知的生命体と時空を超えて対面するのだが……。

というような話です。

これ以上の紹介はネタばらしになるので控えますが、僕がこの本を読んで思ったのは、科学技術上の様々な新発見、あるいは新理論に関する作者の造詣の深さと、それに反比例するような「文明」や「歴史」あるいは「進歩」ということに関する考え方の古臭さです。なぜ「5万年前の人類」が宇宙服を着て月にいるのか、そして「2500万年前」の宇宙船にのった知的生命体とはなんであり、なぜガニメデでそれが発見されるのか、それらの謎を遺伝子工学、古生物学、進化生物学などでの新理論を使って解きあかしていくプロセスは確かに見事です。しかし、その結論として作者が語ることを読んでいくと、そこにはキリスト教的な「神と人間」の関係への類推、欧米型科学技術文明とそれを支えてきた「近代合理主義」に対する無批判な礼賛、「フリーメーソン」あるいは「ユダヤ人の秘密結社」などとして繰り返し提唱される「歴史を動かす陰謀集団」の存在、など、ある意味では非常に「古めかしい」図式化された世界観が見えてくるのです。

それが最後までどうにもなじめず、読み終わるのに時間がかかりました。

どうも欧米のSFとかファンタジー小説は「善と悪」がはっきりしていて、前者が後者を倒すというパターンは踏み外せないようです。「指輪物語」「ハリーポッター」もそうですし、元祖「スターウォーズ」もそうですね。これに対して日本の場合、宮崎アニメが典型ですが絶対的な「悪」がいない。だから主人公たちの闘いはそもそも「悪いのは誰(何)か」、「なにと闘わなければならないのか」を見つけること自体がストーリーの中心になっているように思えます。「ガンダム」や「エヴァンゲリオン」もその延長線上にあるといっていいでしょう。また、「おとなの読書界」ではあまり話題になっていませんが上原菜穂子さんの「守り人シリーズ」「獣の奏者」などもそうです。

ウィキペディアによると作者は「科学技術文明の発達こそ人類の自由な発展の原動力である」と考えており、国家などによる研究への介入と利用を徹底して排除すべきだと思っているようです。政治的にいうと、いわば「アナーキズム」に近い考え方なのですが、そういう「自由の大義」を掲げる人がこういう考え方をもっているというのは、興味深いというか、おかしいというか……。