母は癌で亡くなった。
葬儀は火曜日だった。
火曜はうちの自営の店が定休日。
偶然だろうけど、上手く火曜に
なった事が凄いと家族で話した。
自営は美容、美顔関係の店を経営。
お客様は9割が女性客。
お客様は母を「ママさん」と呼び
男前でサバサバした母を慕って
恋愛や仕事の相談をしているのを
私はよく知っていた。
10代で親元を離れ、出稼ぎに来ている
お客様も沢山おられ、そのお客様たち
は母を第二の母親だと思っていただろ
う。
時にはお客様を自宅に呼んで
母は家庭料理を振る舞っていた。
喜んで涙を流して食べるお客様を
見て、母はいつも満足気にしていた。
店では
ママさん、聞いて〜!!
と彼氏との恋愛相談や仕事の愚痴など
母に話をする。
嘘やお世辞が嫌いな母は
ズバっと本音アドバイスをしては
皆からかっこい〜!と言われていた。
そんな母が亡くなった。
癌と診断されてから、1カ月半で逝っ
てしまった。
葬儀当日は泣いてる女性客たちが
斎場に溢れていた。
入口で柱にすがり、終わるまでずっと
泣いてるお客様もいた。
沢山のお客様や美容関係者が全国
から集まり、本社の社長や重役たち
も来てくださっていた。
駐車場は車で一杯、斎場も一番広い
場所だったけれど焼香に並ぶ参列者が
出入口まで列を成していた。
私の会社の上司が
「芸能人の葬儀みたいだった。
ベンツや高級車が沢山停まってた。
遠い県のナンバーもあったね。」
と言うほど全国から沢山の方々が来
てくださった。
そう言われて母の偉大さに改めて
気付いた。
当日、お天気にも恵まれ恙なく
葬儀は終わると思っていたが
途中から雨が降り出し、雨は激しさを
増して稲妻や雷がゴロゴロと鳴り、
酷い嵐になった。
私は空から降ってくる雨を眺めながら
内緒で夫と交際している事を母が
悲しんでいるように思えた。
稲妻が光り、雷がものすごい音と共に
落ちるのを聞いて
母の遺骨を夫が拾った事を怒っている
ように感じた。
私は罪悪感で一杯だった。
その時は夫が隠れて女と付き合って
いる事も、数日後に夫から別れてほし
いと言われる事も全く想像していなか
った。
母はなんでもお見通しだったのかも
しれない。
葬儀中、そんな事ばかり気になり
母のガッカリした顔が浮かんできて
心が締めつけられる思いだった。
棺に花を手向ける時に
私は沢山の人に押し退けられて
棺から遠くに弾き飛ばされた。
沢山の人が棺の周りを囲み、皆が
「先生!先生!」と泣き叫ぶのを
ボーっと立ち尽くして観ていた。
自分の母親なのに・・・
もはや誰の葬儀なのかもわからない
ような感覚だった。
結局、母の最期は親戚一同が手を握り
私や兄は母に触る事も出来ず、死化粧
も兄の彼女に取られ出来ず、葬儀中は
参列者の方々にお礼と挨拶ばかりして
いたし花も手向ける事が出来ず、時間
も大幅に押してしまい、ゆっくり見送
る事が出来なかった。
それが今でも悔やまれる。
夜は独りで母を想って色々と考えを
巡らせた。
そして母に
ごめんなさい
心の中で呟いた。