物価高に苦しむ日本庶民の生活だが、最近TVなどで来日外国人が大幅に増加して日本旅行を楽しんでいるというニュースが多く流れている。その来日外国人へのインタビューの中で、来日理由について聞いているが、その答えとして、自然の美しさ、文化の深さ、日本食のレベルの高さなどの指摘に加えて日本の物価が安いからというコメントが返されている。
物価の比較は主に各国の通貨為替レートによって大きく影響を受けることは明らかであるが、今回は、日本の物価が実際に世界に比べて本当に安いのか?ということを比較検討してみたい。
物価を比較検討するには「購買力平価(Purchasing Power Parity:PPP)」というものがあり、最も代表的な購買力平価は、国際機関であるOECD(経済開発協力機構)が公表している「GDP購買力平価」で、GDPに対応すると考えられる品物を数千種類選び算出しているのである。これは「為替のレートは、2国間の通貨の購買力によって決まる」という考えに基づき、算出される指標である。
これを簡単な例で示すと、たとえば、コカコーラ1本の値段が日本で120円、アメリカで1ドルであれば購買力平価は1ドル= 120円となる。それぞれの国で、同じものを買ったらいくらかかるかということを比較するわけである。そして、購買力平価を為替レートで割ったものを「内外価格差」と呼び、コカコーラ1本の価格を元に算出した購買力平価が1ドル=120円で、為替レートが1ドル=140円であれば、内外価格差は0.85となるわけである。従って、コカコーラの例だと、内外価格差が0.85なので、15%分「日本の物価が安い」と考えることができるのである。
GDP購買力平価よりも、もっとシンプルにわかりやすくしたものに「ビッグマック指数」がある。ビッグマックは世界中のマクドナルドで売られており価格も安定しているので、各国のビッグマックの価格を比較することで、国ごとの物価水準を簡単に確認することができるのである。本当のビッグマック指数は、ある国のビッグマックの値段をアメリカのビッグマックの値段で割ることで求めるのである。
次の表を見ると明らかに日本の価格は低いことが理解できる。
日本の物価とは別に、TVで同時に外国での物価上昇とインフレーションの酷さが報道されているが、アメリカ最大の都市ニューヨークでは、我々の想像以上に物価が高騰しているようである。ニューヨーク在住の日本人イラストレーターがウェブメディアに寄稿した記事を読むと、アメリカでは以下のようなインフレのすごさが理解できる。
・ スーパーで普通に売られている1ダースの卵が6ドル(835円)。
・ ベーグル屋のサンドイッチが18ドル(2507円)。
・ タクシー運賃が23%引き上げられ、JFK空港からニューヨーク市内への一律料金はチップなどを含めると90ドル(1万2536円)。
・家賃もニューヨーク中心部では年率40%上昇し、平均約$5000/月(700,000円)となっている。
など、日本でも卵の高騰は話題になっているものの、10個入りの1パックが260円程度だとすると、アメリカとは2.7倍近くもの価格差があり、食品だけではなく、タクシー運賃や家賃まで上がっていることから、我々の想像上にインフレが急激に進んでいることがわかるのである。
一方、物価は各国の通貨為替レートによって大きく影響を受けるということは前に述べたが、米国ドルと日本円の為替レートのチャートを見ると上図のようになっている。1995年、2012年頃には1ドル80円という時代があり、この時は逆に外国人にとっては日本の物価は高く感じられたであることが想像できる。一方、我々日本人の旅行者は為替の恩恵を受けて海外旅行が大変安く実現出来た。当時海外への製品輸出の仕事をして販売に苦労していたが、海外出張などではHotel代や食事代などでは恩恵を受けたことを懐かしく思い出すのである。今後は日本の国力を上げてGDPを伸ばし、購買力平価を上げられる日が来ることを望むものである。
<K. Takagi記>