彼のオートバイ、彼女の喜界島⑨ | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

鹿児島ラビリンス。

 

単純に方向音痴なだけかも知れない。ナビは使わないしツーリングマップルと研ぎ澄ました勘で走る。まあ、正直に言うと道に迷った。フェリー乗り場の場所はわかったから、オートバイを停めて歩いて市内を見学する。腹が減っていた。フェリーに乗る前に腹を満たしておく。

 

鹿児島ラーメンを食べたい。天文館のアーケード街をぶらつく。くろいわラーメン本店へ入る。

此処は鹿児島出身の先輩に教えて頂いた店で二年ほど前にも一度来店した事がある。先輩は高校生の時に良く通い、大抵チャーシューメンとライスを注文していたらしい。割とあっさりめなスープにもっちりした麺、もやしに揚げ玉ねぎ、食べ応えも量もたっぷりな肉厚のチャーシュー、ご飯のお供にタッパー容器に入った大根の漬物、大変美味しかった記憶が残っている。場末のスナックのママみたいな雰囲気の女性店員がラーメンを作る。テレビで見たニュースの感想なんかを飽きる事なくずっと店員同士で喋っている。コメンテーターにだってなれそうだ。この女性店員は二年前もずっと喋っていたし、二時間後も二ヶ月後も二年後も二十年後もずっと喋り続けているに違いない。ラーメンは相変わらず美味しかった。

 

フェリー出港までまだ時間があったから鹿児島の老舗デパート山形屋を彷徨いた。ドカジャンにエンジニアブーツ、施設メンテナンスに勤しむ作業員のような姿で。

 

フェリー乗船受付所は薄暗くひっそりしている。待っているのは数組。受付で、条件付き運航、について念を押される。港の状況によっては寄港せずに引き返したり、とばして次の港へ行く可能性があるそうだ。了承する。支払いを済ませ乗船の仕方を教わる。自動車待機場所への遮断機のバーはオートバイは反応しないから、脇の舗道を通って良いらしい。係員の指示に従いオートバイを停める。桜島が正面に見える。胸が高まる。

 

乗船券を提示して船に乗り込む。帽子に青い制服の船員から条件付き運航について再び念を押される。一番安い二等席。雑魚寝っちゃあ雑魚寝だけど頭部だけは隠れる仕切りはある。空いているし、全然良いだろう。予定通り17時30分に出港する。喜界島到着は翌朝の4時30分。

 

休憩スペースの窓から遠去かる鹿児島市街をじっと眺めた。