かけうどん物語 「なんでんそげんかもしれんばってん」 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

ーあらすじー

(その男は異様に“かけうどん”に拘泥していた。複雑に絡み合うシステム、行き詰まる高度資本主義、先行きの見えない漠とした不安、そんな時代の閉塞感に風穴を開ける憎いあンちくしょう。男は“かけうどん”を食べ続ける。ポストモダンは男の手に委ねられていた…)


「おいはやっぱ、やりうどんが好いとるとですたい。そげん特別うまかっちゅうもんじゃなかばってんが、近くに行ったら入ろうごつなるもん。のう、爪やん」



西鉄プラザ が運営する「やりうどん」は現在、福岡県内に四店舗展開している。久留米店は、西鉄久留米駅のバスセンター内にある。男は中学生時分から幾度となくお世話になってきた店である。誰かが言っていたように、特段、味がどうのこうのと語る類いのものでは無いけれど、取り敢えず腹を満たしたい時、なんでもいい時、考えるのが面倒くさい時、時間が無い時、西鉄電車を利用した時、そんな時に一人でも全く気兼ねなく完全にリラックスした状態で饂飩にありつける、非常に便利な店である。



カウンター3番席に腰を下ろした男は、早速「かけうどん」(税込329円)を誂える。注文を取りに来た女学生風のアルバイト店員は、一瞬フリーズしてから電源を入れ直すと、それだけで大丈夫ですか、なんて、首をかしげ不思議そうに訊いている。やれやれ。それ以外に一体何があるっていうんだろう。そこに物語があればね…、男は心で呟き、無言のまま微かに視線だけで頷いた。クールだった。



程なく提供された「かけうどん」はトッピングが葱だけである。潔い見た目はシンプルで美しい。裸にランニングシャツ一枚だけの苦学生みたいにピュアだ。うっすら茶色い出汁は、醤油のしょっぱさが強い。スーパーで売ってる市販のうどんスープを希釈した感じである。化学調味料も結構使ってあるのではなかろうか。チープでチェーン的なジャンクな味、でもそれが堪らなく愛おしい。空きっ腹に塩分が補給され、身体に沁み込んでいく。やや太めの麺は、ぽそぽそと途中で切れてしまう。それも好きだ。もう地球と一緒に抱きしめたい。

財布から小銭を全部取り出し、盆にじゃらじゃら並べ、ゆっくり数える。大丈夫、十分足りる。あの日の中学生気分に浸りつつ、男は安堵する。伝票を掴みレジへ立ち上がる。


軽い足取りに合わせて「かけーう」と書かれた伝票がひらひらと舞う。



やりうどん 久留米店うどん / 西鉄久留米駅花畑駅櫛原駅
夜総合点★★★☆☆ 3.6