かけうどん物語 「もう一つのZERO」 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

ーあらすじー

(某うどんチェーン全店で「かけうどん」を食べる。その偉大なる挑戦を己の責務と信じ疑わない男が、混迷を極める現代、平成の世に存在していた。しかし、男のブログの更新は滞りを見せ始めていたのである…)


昼下がり、青く澄みきった空の下、男は直射日光をまともに浴びながら北上を続けていた。「かけうどん」に関する考察で頭の中は一杯だった。


「かけうどん」を食べ続けるには3つの要素が重要ではないか、男は推論を出す。


一つ、「かけうどん」を食べることの出来る強靭な肉体。


二つ、たとえどんなにそれが魅力的でも店の売りだとしても本日のおすすめであっても、具の入ったうどんは決して注文しない、というストイックな精神力。


三つ、「かけうどん」の代金を支払えるだけの経済力。


(…やはり、俺は選ばれし人間だ)


三つの要素を満たす人間が果たして地球上にどれ程いることだろう、男は全能感に浸っていた。

男は「みの屋うどん 本店」さんへ辿り着いた。入り口前には、枯山水の積りなのだろうか、心和む日本庭園が設えてあり、建物の外観も新しそうで、なかなか気分がいい。

席に着き、水を持ってきて下さった店員氏に、メニュー表には一切目もくれず、素早く注文を伝えた。


「かくうろんくらさい」


「えっ。肉うどん?」


「いや。すいません。かけうどんです」


「ああ、はい。うどん一丁!」


実は本日、二度目だった。男は煙草を買いに立ち寄ったコンビニでも、その持ち前の滑舌の悪さを露呈していた。女子高生らしきアルバイト店員氏から、ショートホープを「塩昆布」と聞き間違われていたのだ。


危うく道を踏み外すところであった。

中心に葱だけが浮いている「かけうどん」300円である。昆布とかつおの出汁に、粘りのある手打ち麺、当たり前のように、うまい。確かにうまいのであるが、この時男は強い日差しに長時間晒された直後だったことで、熱いうどんよりも冷たい水の方が、より、うまかった。

ピークから大分時間が経ったためであろう、すり鉢に入った無料の煮こんぶは、底にへばりつく様な状態で極く少量しか残っていなかった。その分味が染み込んでいたようで、身体中の毛が真っ黒になった気がした。


(…はあ。NEOとか書かなきゃ良かったな)


男は本音を漏らした。しかし、男はやらねばならぬ。なぜなら、そこに「かけうどん」があるから。物語はまだ、始まってもいない。


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