・母親と 姉妹二人 ①

 

慣れ親しんだパートの勤務も三年も過ぎれば、勤務時間の変則にも心良く対応してくださる店長も居て、由布子はエコバックに買い込んだ食材を持って帰宅していた。

 

家族として、四人が揃う食事もさほど多くもない和久井家ではあるが、時に揃っての食事ともなれば、誰ともなくビールやワインが食卓に置かれ、、主婦をしている由布子にすれば、おつまみは何にしようか、となるのである。

 

やはり、世代の違う娘たち二人との二世帯生活ともなれば、身近な人の動きは何気に気になることとなるも、 世代や 思いの違いもあり、細やかなスキンシップなどは

見過ごすことにしている。

 

 父親の和男も娘の思いに従い、しばらくは この家での同居を許したということは、、

見ぬふりと決め込み・・それでも気のなるのか、、 ここ最近は妻の姿が見えない

となれば、「おーい、 ゆーこ」と呼ぶことも 多くなったと思うのは、妻としては

思い越しなのか・・。

 

「洋介さんのお世話は由香がしてあげること、おねがいね」 と言ってはいるのだが、

つい、早起きしたときの由布子は四人分のお皿に盛り付け、決められたテーブルの前に並べてしまっている。

そして今朝も、・・思わず由布子が向けた視線の先には部屋着姿で降りて来た由香。

 「 お は よ う・・時には ご飯と お味噌汁も どうかしら・・」

 

 「・・ありがとう、 勧めてみるわ 」

 

「今日は 定時で帰れるの? 綾ちゃんが 久しぶりに顔が見たい ような様子だったわよ。」

「・・そんなの、先日なんか携帯で話ていて、制服が変わった からって、”横からの

  姿も見せてよっ” て  せがまれ たんだから・・・」

  あっ、洋介さんも起きて きた 。

 

  「・ ・ ・ ・ 」

 

そして、由布子も 三人が出かけたあとに、自らの出勤を急ぐ。

 

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窓の外には夕暮れ時を感じ始めたころ、時計に眼をやれば 6時を回ろうとしている。

調理の下準備も終え、椅子に座わろうとしたとき インターホンが来客を告げる。 

 

由布子はひらめく予想と浮き立つ気持ちが重なり、モニターの姿を確認しただけで、応答もそこそこに玄関へと急ぐと、、

 

 「 はーい、今 開け ますー 」

 

ドアを開けると 、そこには由布子の予想どうり、 微かな笑顔を浮かべて立つ娘、

綾乃の姿があった。

ゆったりとしたシックなワンピースに、淡いグレーのトップス。 バックとポリ袋を提げ、、その袋を由布子に手渡しながら、

 

「由香ちゃんも 居るの?・・こちらに住んでいるとか言ってたけど・・」

「まだ 帰ってはいないの。もう少ししたら 帰ると思うわ」

 

手渡された袋をもって、ダイニングの明るい部屋へと先導した由布子は、あとに着く 娘の姿を 振り返り見ると・・

 

  「 えっ!、綾ちゃん、少し 太った?・・ぇっ、もしかして・・ 」

「 ええ、 四か月になった ところ・・」

「 悪阻の症状もようやく抑えられ、この前の由香ちゃんの結納の時にも出席できて

 良かったと思っているの。・・お付き合いから、もしもを思って早めた結婚や旅行

も 正解だったし・・最近の安定した体調にも、ようやく安心しているの。」

 

  すると、 玄関の方から 「  ただいまぁー  」と  由香の声が・・ 。