・ 恋 愛  指 南 (二)

 

和久井家 四人が揃った遅めの食卓。母 が作ったお鍋から湯気が上げっている。

「今年も残るところひと月あまり、こうして冬の時期こそ温まるお鍋よね・・お肉の他、有るものをつぎ込んでの寄せ鍋なの・・どうぞ 召し上がれ・・」

 

父の和男はワインを一口、二口と飲んだあと、妻  由布子のグラスにも注ぎ入れる。

「ありがとう 。・・あなたたちも、どう?」

 

「いや、、私たちは、後でふたりして話があるから・・」

 

煮え上がるお鍋  鍋のものに箸を勧めながらも、、久しく四人が揃った明るい食卓に会話も弾み・・  父と母の様子を見ていた由香は

 

「お父さんとお母さんも、、今でも、お互いに ” 愛してる ” とか、”好き”って伝える

ことが あるのかしら?」

 

母の由布子は、突然の娘の言葉に、父の顔を見やると ニッ と笑みをうかべ・・

「そらっ、夫婦なんですもの・・時には、、でも、改めてくちにしなくても、仕草や雰囲気も交えて、心を寄せる言葉からでも想いが伝わるって ことはあるわよっ」

 

「・・なるほど、それが 夫婦として 愛し合うって ことネ 。」

 

  そうよね。まだ 中年であっても50にもならない・・精力旺盛な男と女。

時に二人で居る時にだってを平穏をよそおって、お母さんの身体にタッチしている

ことだって 、由香はなんども見かけているんだから、

”・・そのようなことは、有って当然よね ” 

明るく話せる家族間であっても、いかんせん、出そうになる言葉を呑み込んだ由香。

 

由香は以前に、家族と談笑していた時のお姉さんたち二人のことを思いだしている。

 

幾度となくデートを重ね、相愛の関係となったカップルとなれば、家族の存在など、さほど気にすることなく・・触れ合うスキンシップなど・・、

 

お姉さんったら皆の視線を逃れたつもりでも、、由香にだけは構うことなく、いかにも愛し合う二人であるかのように・・

 

・・このような二人を見れば、すでに 身体の関係など・・言うに 及ぶことなく・・

 

 いいよねー、恋愛して好き合った二人が心通わせて、愛し合うことができるなんて、

二人だけの時ともなれば、、誰憚ることなくラブラブできて、恋愛から新婚の時って

人生で一番楽しい時なんでしょうね。、、いつか、わたしも・・” と、

 

 男からの・・ ” 愛情表現” を欲しているかのように、由香は愛し合う恋人どうしが

ラブラブとした雰囲気に浸る思いを想像してしまう。

 

「お姉さんたち、もう結婚することにきめたんでしょっ・・どこかの式場で、披露宴  とかもするの?」

 

「・・明けての春頃か・・遅くは、 june bride になるのかも知れないけれど・・

 由香ちゃん、それよりも、、食事が終えたら私の相談にのってくれないかしら 」

 

お鍋の具材が少なくなってきたころ、母が菜箸をもって新しくお肉を注ぎ入れる。

「あ、私はごちそうさん。・・由香ちゃん 貴方の部屋で待ってますからね」 と、

 リビングに置かれたブライダル雑誌を手にすると、二階へと上がって行った。

 

「あの深田祐樹さんて、5歳上だけあって、落ち着いたイイ感じの方のようね。

・・綾乃は気にいっているみたいですよね。式は挙げるとしても、披露宴の方はほどほどに済ますみたいだけど、海外の新婚旅行に行くみたいに言ってたし・・由香はおのろけを気聞かされるかもしれないわよ」

 

「へー、そうなの?。具体的には聞いていないんだけど・・」

由香は一口、二口 お肉を頬張ると 、先に上がって行った綾乃姉さんが気にかかり、

 

「私も ご馳走さん。お姉さんが相談って、何のことかしら」