今回は前回の投稿で、ドタバタと
相部屋のベッドに拘束された、N君の話..。
こちらとしては「尋常ではないヤツが」
入って来たナとおもった。
なにしろ彼は「事件に巻き込まれてね』発言以来、
3日3晩は寝ていたと思う。
・・不眠症の僕にとっては羨ましい限りだ。
しかし、この「事件に巻き込まれてネ」
発言は、気になってしょうがない。
1週間位すると、彼は温厚な青年に
戻って行った。
時は、深夜.喫煙室内に合い室の
茹でダコっぽいオカッパ頭の人、
それから退院ももうすぐというインテリジェンスな
人がいた。
日曜、病院は社会復帰の為3週以上入院している人は、
外泊をさせられる。
閑散とした喫煙室の中、
「・・・で、事件って何だったの?
・・と切り出した。
彼は「ああ、あれは俺が住んでいるアパートの
傍に秘密結社が入って、夜な夜な俺の部屋を
盗聴するんですよ」..と言う。
「拉致されそうになったこともありました」
で、僕が「盗聴しているってどうしてわかるの?」
と聞くと「ピー...ガー...」と音がするんですと言う。
「名前はММ団です。」
・・この時点でオカッパ茹でダコが、
吹き出した。
・・・そりゃそうだ..。
今時30年前のSF小説のような話があるわけがない。
・・また、ММ団が仮に存在していたとしても、
N君を拉致・拘束するメリットがない..。
僕が「部屋は何回だったの?」
と聞くと「2階で外の窓から覗かれた事もありました」
・・・と言う。
「足場は?」と聞くと「脚立でした」という。
この時点でオカッパ茹でダコが吹き出し始めた。
お笑いモードになったらもう、ツボから抜け出せなくなるのだが。
N君は「本当なんですって!」と床をドカっと踏み、顔を引きつらせていた。
これは、まずいな..。と思ったのだろうか、
いつも傍らで無口なインテリの人が口を開いた。
「オカッパさん、一旦、席を外した方がいいよ」
・・・と言う。元来、気が弱いオカッパは、ナニゲに部屋を出て行った。
インテリの人は、理路整然と「それが幻覚なのだと言う事を諭した」
N君は「だってその時は、三日位シラフだったんですよ!」と言う。
インテリさんは「毎日、どれくらい呑んでいたの?」と聞く。
N君は「サントリー角1本です」
インテリさん「そんなに!? それじゃあ脳も興奮するよ」
シラフがまともじゃないじょうたいになっている。
・・・それまでアル症の説明本をまともに読もうとしなかった
N君だったが、インテリさんの説明に、ひとつひとつ大きく頷いていた。
・・そして、N君、初の外出日、N君アパートへ皆で言ってみた。
近隣にアヤシゲな組織もない。
事件とはNくんの脳内事件であった事が証明された。
N君の彼女は彼の心からの納得に涙していた。
・・酒の幻覚・幻聴にも個体差があるようで、僕の場合、
網膜や脳内に現れる。・・よって「ああ..幻覚始まった」
・・・とある程度、客観視できるのだが、
N君の場合ウイスキーを毎日1本呑んでいたのを
突然やめたリバウンドパワーが最強だったのだろう。
・・がN君にとっての知識として現実・幻覚・幻聴の
分別がつき、納得したのは、大きな収穫だった事だろう。
つづく