ユリ姉、、、
私もあの頃から、変わってない。
私は、、、、、変われない、、。
変われないんだよ、、、。
天はそう言って、寝室の部屋に行ってしまった。
リサ
平手、、あの子と昔何があったの?
ユイって、、誰?
平手は深くため息を漏らしながらソファーに腰掛け、リサも平手に寄り添うように座った。
平手はゆっくりと天の事を話し始めた。
天は某起業家の愛人の子供だった。
幼少期は父親は居ないと母に育てられ、母と娘、二人っきりで、けして裕福な家庭では無かったがそれなりに暮らしていた。
しかし元からあまり体が強く無かった母親は無理がかさなり、突然病気で亡くなってしまう。
身寄りの無い天は施設に入ろうとしていた時
、見知らぬ男がやってきて「今日からお前は山﨑家の人間になる」と言われて連れて行かれた。
その男こそ天の実の父親だった。
何故、今まで無関心だった天を受け入れたのか、答えはただ一つ、、、、後継ぎが天しか居なかったからだった。
天には腹違いのお姉さんが居た。本妻の子供だ。
けどその子は小さい頃から体が弱く、無理をするとすぐ倒れてしまう状態だった。
その子の名前がユイ。
天は跡継ぎとして、いきなり英才教育が始まった。いろんな事を叩き込まれて、出来なければご飯すら与えてもらえなかった。
義理母には厄介者として扱われ、父親からはただの跡継ぎの道具として扱われ、そこには愛情は一切なかった。
ある時、天が自分の部屋で泣いていると、ユイがご飯を持ってきてくれた。
ユイ
あの、、これ良かったら食べて。
天はお腹が空きすぎて、すぐさま口に方張った。
ユイは優しく微笑んで見ていたが、天はその笑みが馬鹿にしてると勘違いし、噛み付いた。
天
私が必死に食べてる姿が面白い?
動物にでも餌付けしてるようで面白いんでしょ?
ユリ
違う。私は代わりに謝りに来たの。
あんな父と母でごめんなさい。
私が体が強い子だったら、あなたにそんな苦労をさせないで済んだのに、、、。
本当にごめんなさい。
ユイは天に深々と頭をさげた。
それからユイは体調の良い時に、必ず天の部屋に訪れるようになった。
ユイの優しさから次第に天も心を許し始めた。
天にとってこの家に来て初めて愛情に触れる事が出来、ユイにとってもお互いがそれぞれの寂しさを埋められる、心が許せる時間だった。
天と平手が出会ったのは、天の父親の会社と平手の父の会社が商談する為に天の家で会食をする事になった時だった。
お互いの父親が跡継ぎなる娘達を今のうちから仲良くさせようと、部屋に二人にさせられた。
部屋に入り扉を閉めると、天がすぐに言い放った。
天
私がこの会社を継いだら、私はこの会社を潰す。だから、アンタと仲良くするつもりは無い。
平手
、、、笑笑
それで?その後は何をするの?
天
医者になって、ユイを助ける。
平手
、、、ユイ?
あぁ〜本妻の子供ね。知ってるよ。
あなたが愛人の子なのもね。
てっきり、憎んでるのかと思えば、意外だね。
でも、、、医者になる前に死ぬんじゃない?
笑笑
その言葉を言い放った瞬間、天が平手の胸ぐらを掴みかかった。
天
ユイは私が死なせない!!
治してみせる!!
どんな事があっても、絶対死なせない!
平手は掴まれている手を弾いた。
平手
だったら、もっと考えなよ。
会社を潰して医者になる時間と、自分が立場を確立させて自由に利益を使えるようになるのと、どちらが効率的に良いか。
病気なんて、重ければ重いほどお金も時間も掛かる。
自分の私怨より、いかに早くその子の為に出来る事を考えた方がいい。
違う?
天
、、、確かに。その通りだと思う。
天は顔を伏せて、身体が小刻みに震えて居た。
顔を覗くと、瞳に涙をいっぱい溜めて泣くのを我慢していた。
平手
、、、笑笑
何もかも背負う必要はない。
平手は天を優しく抱きしめた。
不意に抱きしめらた天は予想以外の事にビックリしながらも、背中を優しく撫でるその手が、
自分の気持ちを分かってるよ、、大丈夫だよ、、、と言われている様で、張り詰めていた心の重さが解放されたかの様に涙がとめどなく流れて安心感に包まれた。
それが平手と天との初めての出逢いだった。
それから、二人はお互いの家を行き来するほど仲良くなった。
天
ユリ姉〜大人はさぁ、どうやったら早く私を認めてくれるのかな。。。
平手
、、、結果を残す。
利益が一番大切な人達だから。
天
企業するとか?
平手
笑笑
それも有り。ただ学生の私達には資金もなければ、未成年は何をするにも親の許可が必要になる。
企業するといって、「分かった」と言うかな?
そんな協力的な人達では無いでしょ?
天
確かに。
平手
今出来ることは、経済や色々な知識を学ぶ事で、より優れた進学をするしか認めて貰えない。
今の天は、誰かに頼るのではなく、自分で道を掴みとるぐらいの強い気持ちが必要なんじゃない?
、、、笑笑
天には守りたい人が居るでしょ。
ユリ姉の言葉はいつも弱くなる気持ちを強くしてくれた。
天
ユリ姉、ありがとう。大好き。
平手
笑笑
いつでも、天の味方だよ。
天は平手に抱き付き、平手は優しく頭を撫でた。
天は毎晩、机にかじりつくように勉強をするようになった。
天が勉強していると、ユイが部屋に入ってきた。
ユイ
、、天、、、。
話しかけても勉強に集中し過ぎて返事が返って来ない。ユイはそっとベッドに座って天の後ろ姿をみつめた。
天
わぁっ、、ビックリしたぁ、、
ユイってば部屋に来たらなら声掛けてよ笑笑
ユイ
ゴメンね。
天が集中してるから邪魔かなって思ってさ。
天
ユイが邪魔なわけないでしょ。笑笑
ユイ
そういえば、最近新しいお友達が出来たの?
天
新しい友達??
あぁ〜ユリ姉の事?
ユリ姉は友達って感じじゃ無くてお姉ちゃんって感じ。いつも的確なアドバイスくれるし、頼りになるんだ。笑笑
ユイ
そうなんだ。
良かったね。。。
天
ユイは身体の調子どう?無理しちゃダメだよ?
ユイ
天こそ、無理してるんじゃない?
最近はずっと勉強してるし、、、
何かあったの?
父から、もっと勉強しなさいって強く言われたの?
天
何もないよ笑笑
ただ目標を持って勉強してるだけ。
ユイは私の心配なんかしてないで、
自分の身体の心配しなよ。
ユイ
(私じゃ、、天の相談役にもなれないんだね。)
天
ん??何か言った??
ユイ
ううん。天の言う通りだよ。
もっと自分の体を大事にするね。
天
うん。
じゃぁ私、まだ勉強続けるからね。
おやすみ。^_^
ユイ
うん。
おやすみ。
天はユイに心配をかけたくない。
もっとユイに私の事を心配するのでは無く、ユイが生きる為に自分自身の事を考えて欲しいと思い、ユイの前では弱音は言わなくなった。
ユイは自分の部屋に戻り、扉を閉めると自然と瞳から涙が溢れた。
ユイ
私は、、バカだなぁ。。
また、、いつもの自分に戻っただけじゃん。
私は最初から何も無いでしょ笑
そう言うと静かにベッドに入り、横になった。
それ以来、
ユイが天の部屋を訪れる事は無くなった。