ある相談者の方から、電話がありました。

 

「私は別に確定申告をする訳ではないのですが、ちょっと気になったことがありまして・・・。今日、健保組合から『医療費のお知らせ』というものが届いたのですが、私がいま(こころの病により)受診しているクリニックの記録が明細に載っていないんです。そのクリニックでもらった処方箋を持って行って薬を出してくれた薬局はちゃんと記載があるのに、どうしてですか?」

 

私がサラリーマン時代、総務部門(一部、人事労務も含みます)で働いていたことは以前、お話ししたことがあるかと思います。

 

そのときの経験で、確か「精神神経科系の受診に関しては〝明細に記載されない〟というルール」があったことをおぼろげながらに思い出しました。

 

とはいえ、曖昧な記憶に基づいていい加減な回答をしてしまう訳にもいかないので、相談者の方に受け取った書類を一式送っていただき、確認させていただくことにしました。

 

送っていただいた書類を確認すると、思っていた通りでした。

 

「医療費のお知らせQ&A」なるものがあり、そのQ2「医療費のお知らせにおいて記載されていない医療費があるのはなぜか」との問いに対し、回答には「〝特定の診療科〟を有する医療機関を受診した場合(中略)は、医療費等が記載されておりません。」としており、Q3では「特定の診療科とは何か」との問いに対し、「精神科のことです。」と明記されています。

 

つまり、医療費明細には「精神科の受診歴は(個人情報の都合でしょうか?)載せません。載せたものが欲しければ、組合までご一報ください。」という制度なのです。

 

私は複雑な思いに駆られました。

 

確かに、こころの病で受診されている方にとって、「私はいま、精神科を受診しています。」と対外的に話すことは、もちろん状況にもよりますが、あまり積極的な方は少ないものと思われます。

 

でも、その話す、話さないは本人が決めることであって、第三者が決めることではないと思うのです。

 

それを健保組合が「精神科を受診していることはあえて伏せておきましたからね。」と言うのは、少々〝おせっかい〟なのではと感じてしまいました。

 

このことを「オプト・イン」と呼びます。

 

分かりにくいと思いますので、具体例を挙げて説明すると、我が国の脳死下における臓器移植が「オプト・イン」の典型例です。

 

自ら「私は脳死後、臓器を提供します。」と積極的に意思表示をしていなければ、臓器提供の対象とはなりません。(法改正により、家族の承諾で本人の意思が確認できなくとも、臓器提供できるようになったようですが・・・。)

 

これと同じで、健保組合は「精神科の受診歴は開示しません。開示が必要であれば、組合にお申し出ください。」ということなので、構図は全く同じです。

 

でも、これってどうなんだろう・・・。

 

「精神科を受診していることを伏せる」と言っても、送られてきた封書には大きく「本人以外の方は開封しないでください」との注意書きがあるようですし、であれば、本人から何の申し出もなく明細への記載から省き、必要な場合は連絡をください、というのは少々違うと思います。

 

なぜなら、頼んでもいないのに「精神科を受診している」ことを伏せるというのは、精神科を受診していることを特別視していると感じるからです。

 

なかには、家族に内緒で受診していて、明細に記載されなくてよかったという方もいなくはないかと思いますが、前述のように封筒にそもそも「本人以外開けないでください」と書いているのですから、その必要性は低いものと考えています。

 

健保組合にもそれなりの事情があっての配慮ではあると思うので、一方的に批判する気にもなれないのですが、なんだかモヤモヤする感じがしてなりませんでした。

 

その相談者の方には、上記の流れを説明し、冒頭の通り、確定申告をするわけでも、もっと言うと確定申告を要したとしても、確認したところ医療費で年間10万円には満たないですから影響はないことを告げ、相談を終えました。

 

これからも、日頃のこうしたちょっとした気づきについて発信していけたらと考えていますので、引き続き、よろしくお願いします。

 

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