いや他人事じゃないよ田中、君だよ、君がキモいんだ君がキモいんだ。分かるね? 君がキモいんだ、ということを言ってやればよかった。そしてそれこそが俺が表現したいこと。まさに伝えたいメッセージ。それをどうやって表現するか。君がキモいんだ。君はキモい。テーマはそれか。君はキモいしかしキモさの自覚は最高の自由へと君を誘う。そういうことを表現したい。キモくていいというか、キモさの自覚はすなわち他者の目からの圧倒的な開放を意味するのである解放ね。それゆえに重要なのである。日本人は他者の目に縛れて過ぎている。それを解放してやりたい。おれみたいに能力はあるのに自分をがんじがらめにして退屈な平凡な阿保に成り下がってる人にこのメッセージを届けたい。君はキモい。これを届けたい。実感して、ハッとしてもらいたい。どうすればそれが可能だろうか。どうすればそれが分かってもらえるだろうか。おれが経験したみたいな絶望を、絶望からの解放を、味わってもらいたい。これによって一気にこの国の針を進めたい。どうやって表現するか、君はキモい。君のキモさを僕に見せてくれってこと君のキモさを受け入れる用意がこっちにはあるのに、隠すなんてひどいじゃないか、退屈じゃないか、やるせないじゃないか、もっと信頼してくれよ、こっちをもっと楽しませてくれよって感じ。世界的に。もっと弾けろよ、バカみたいにはっちゃけろよ。ただし攻撃するなよ。キモさを自覚しなければ論外だぞ。そういうフェイクはいらないから。そういう本にする。キモさを放て、どこまでもという表現。本。小説なんだろうな。そういう強烈なメッセージを放ちたい。サーカスのやつで、有能な会社員を舞台に上げて、彼は平凡な会社員でノダくらいがいいか。仕事はできるが、根はキモい奴っていう。そうだよな、野田ってまさにそうだわ。あんだけキモいのにキモさを隠して可哀そうに。もっと解放すれば面白いのに。解き放てよ。ノダ、バカみたいにかっこつけてないで。社会みたいなもんに染まってないで。そういう施工管理の仕事してる現場の人。一級建築士も取ったし、イケメンで高身長で、ただ物をとにかく知らないが、コミュニケーションは取れてるんか? いやキモがられてることに気づいてないだけなんか? ピーなんかはおれを面白がってたし、おれを好いてたが、明らかに。のだに興味があるのは、おれに興味があったからだよな、完全に。勝手に話を進めてくれていい。のだね。のだがモデルか。あいつがどうなの、けっこう仕事できている風なのに退屈な人生。でももっと楽しいのにっていう。それをどう表現するか。君のキモさを解き放てよと。ノダがキモくない。キモさを隠してるって設定で。ノダ的な男。野本。野本がキモさを隠してるって設定? 退屈。退屈か。退屈だよな。ありがち。でも小説にするなら、現代劇にするなら、それくらいは仕方がないんじゃないだろうか。まあじゃあいいよ、いや待て、ここでも一つ納得がいるかも。まあ待て。モチーフを考えようじゃないか。テーマはずばり『君はキモい』これだ。これだけを十分にぶち上げたい。君を舞台に上げる君が舞台に上がる。という話。男に向けて書く。君が舞台に上がる。君は舞台に上げられる。君はどうするか。君は辺りを見回す。ねずみ男がいて、顔でか男がいて、みんなにいいところがあると思う。彼らを醜いとか思わない。君はイイ奴だから。君は退屈な奴だから。芯まで退屈な奴だから。こういう品行方正な男を人は退屈と感じる。隙がない、というか可愛げもなけりゃ欠陥もないなんて人間らしくなくて、彼は仕事も頑張っている。いいのだそれで。十分よくやれてる。育児もよくやり、嫁を気遣い、自分より他人を優先する。身内に限らない。他人を優先できる。優しい人間である。ただ退屈。彼は、とか? 君はどこまでも従順に世に倣っている。冬の夜ひとりの旅人がの感じで、君で書くか。君はこれを読んでいるのか、サーカスの舞台に立っているのか分からない、そういう状況。これが新しい文学の形だなどとは分からないが、もういい加減突破したい。この辺りでもうこの恥ずかしくてキモい作品を創り上げて旅に出たい。メッセージを残して旅に出たい。社会現象を起こして旅に出たい。そのうえでいくつかのギミックが必要かもしれない。どんな? まず君、読んでる君とサーカスを観覧してる君をごちゃ混ぜにして、実際に舞台に上げてしまうこと。そこでの君の行動が舞台に何か影響を与えるわけではない。君は舞台からはけたり、舞台に出て来たりする。君は舞台の裏側を見る。舞台の裏側? どういう人間たちが世の中を構成しているのかを見る、とかそういう感じだろうか。それはけっこう面白いかもしれない。この舞台はなんだ? ってことの方が読者の好奇心をそそるに違いないから。でもそれは夢の一部みたいなもんでさ。劇中劇の主人公をさせられるのが、主人公、君。名前はない。ない? ないのか? 分からん。あるのか? いやないのかもしれない。でもそういう物語。けっこう面白いような気がする。サーカスの裏側。サーカスというかサーカステントの劇団。いや彼らはサーカス団というか見世物小屋の集団。エレファントマン的な人間たちの集まり。異形の人間たち。多様性から排除された人々って感じか。平等に取り残された人々。元猟奇殺人者とか。ねずみ男はそんな感じ? これは一体どういう話になるんだろう。見世物小屋の裏には何があるんだろう。これでちょっくらプロットを仕上げて、それから箱書してシーンを思い浮かべていこうか。これ面白くなるかなあ。一〇〇枚くらいで簡潔に。難しく考えずに。

こすむとへりとか