ミスターH その2 | Final Notice
その男はHと名乗った。
年齢は私より1つだけ年下。

『お酒好きなの?』
『うん、好き…』

『いつも何飲んでるの?』
『ビール…』

『いつも一人で飲んでるの?』
『いや…友達とかと飲んでる』

『あ、そーなの? なんか一人で寂しそうに飲んでたから…。この店は知ってた?』
『家がすぐ近くだから、知ってたけど…。なんか入りにくくて…』

思った通り…体はデカイけどボンヤリしてて、なんか鈍くさそうなヤツだ…。


……


会話が途絶えた。大体、マスターでさえ会話に困っていたのに、口下手な私がどうにかできるわけが無い。何故マスターは私をコイツの隣に座らせたのか? そもそも何故コイツ、入りにくかった店に今になってひょっこり、しかも1人で入って来たんだ…?

そんなことを考えながら私はまたタバコに火をつけて煙を吸い込み『どうしたもんかなぁ…』と途方に暮れていた。

その間Hは私に背中を向け、ダーツを投げている他の客をボンヤリと眺めていた。

暫くしてから、急に私のほうに振り返って、初めてHのほうから話掛けてきた。

『みんな、ダーツしてるの?』
『そうだよ。Hもやってみる?』

『え…いいよ…。みんな上手いやん…。』
『最初は誰だって下手クソだよ。投げてみなきゃ解らないだろ? それに俺だって下手クソだよ。』

 私一人で相手をしていても間が持たないので、ココはみんなに協力してもらおうと思い、嫌がるHに無理やりダーツの矢を握らせて、『すみません! 次、コイツやります!』とみんなに向かって宣言して、自分もダーツの矢を握ってダーツ台に100円玉を入れ、Hと2人でCountUpを始めた。

つづく。