ミスターH その1 | Final Notice
 1週間ぐらい前のことだけど、いつものバーに行くと、壁に向かった席で一人でビールを飲んでいる男がいた。初めて見る男。だーれとも話さず、一人で黙ーーって飲んでいる。

 体はデカいけど、どこか鈍くさそうで、マスターが話しかけても、『はい…、はい…』と朴訥な口調で答えるだけで、一向に会話が盛り上がらない。

 少し離れたところに座った私は、いつものように最初の1杯のビールをノドに流し込み、『変なヤツが来たナァ…』と思ながらタバコに火をつけた。

 暫く顔なじみの他のお客さんと話したり、ダーツを投げたりしている間も、ヤツは黙って時折周囲を見回したりしながら、思い出したように瓶ビールを口に運んでいるだけで、ますます扱いにくい雰囲気を醸しだしていた。

そんな時、マスターが突然「ケイタロー、ココ座れ!」と言って壁に向かった席に座るデカイ男の隣を指差した。

 ……マジかよ……

こんな暗いヤツの相手をしなくちゃいけないのか…。まぁ、マスターには普段いろいろお世話になっているし、このままだとますますバーの雰囲気がおかしくなるから、少しいじくってみるか…。

なんて思いながら飲みかけの瓶ビールを持って席を立ち、デカイ男の隣に移って話しかけてみた。


つづく。