「悪かったよ、突然声かけたりしてさ。」

自販機で買いたてのお茶を、一気に半分まで飲む。

「...いえ、私も周りをちゃんとみていなかったので。」

そんな思ってもいない言葉を、思ってもいない顔で出すと、彼は吹き出した。

「あ、名前聞いてなかったわ。
俺は永田 隼斗(ナガタ ハヤト)、高校1年。」

「山名 絢未、中学2年生です...」

「中2!?
ごめん、タメかと思ってたわ...」

「よく言われるんで気にしないでください。」

リアクションが大きい人だな。
それが隼斗の第一印象だった。

それからたくさんの話をして、たくさん笑った。
お互いの家の場所、学校、連絡先も交換した。
彼に声をかけられて驚いた心臓は、不安定な気持ちと一緒にどこかへ潜んで、消えていった。

「私そろそろ行かなきゃ。
おばあちゃんに挨拶できてないし。」

「ああ、呼び止めて悪かったな。
家まで送るか?」

自転車乗せるよ、笑顔でそういう隼斗に潜んだ心が浮いてきて

「ううん、大丈夫。
男の子と帰ったら心配かけちゃう。」

「そうだよな、じゃあ気をつけて帰れよ。」

そう笑って手を振ってくれる隼斗に浮いた気持ちがまた潜み、奥でゆらゆらと揺れ動いている。

「ありがと、また遊んでね!!」

精一杯、中学2年生の笑顔で。
大人っぽいね、なんて言わせないよ。
一番子供のような扱いを受けているんだから。

大人っぽい、じゃなくて
私は早く"大人"になりたい。