世間を舐めていた例のポンコツ野郎の職場は

外資系のトップ企業だった訳ですが、

そこへ短縮してしばらく経った頃、

一本の電話がありました。

前職の同僚の女の子でした。


そう言えば当時預金課長を中心に

女の子数人と仲の良いグループができていて、

その子も含めて結構遊びに一緒に行きましたっけ。


ほんの2〜3年前のことでした。

ある晩、遊び過ぎて終電に間に合わなくなって

しまったことかありました。


するとその預金課長が、

俺、そう言えば支店の鍵預かってて

明日の朝早番だった、みたいなことを

言い出しました。


つまり男性はその課長と私、

他は女性3人。

支店に泊まっちゃおう、という

結構エグい課長の企みでもあったのです。


女性3人のうち一人は来年結婚することが

決まっていました。

そして残りの二人のうち一人は

なぜか入社以来私とよく気が合い、

支店の中でも、

早く付き合っちゃいなよ、

と言われる程度にまあ良好な関係だったのです。


ただ私の方は彼女のことは気になりつつも

この会社いつ辞めよう、と言う

入社以来の舐めた感覚が消えず、

辞めてくやつがその職場に彼女を

作っておいてく、ってどうなのよ?

と言うところで踏ん切りがつかず

へたれたままでいたので、預金課長的には

半ば既成事実っぽいことを作って

私の背を押すつもりだったようです。


その夜は、男女の部屋分けをせず、

酔った勢いでみんなで一部屋に

ざこ寝して、言いたいことを

言い合おうみたいな空気を作り出しました。

女の子たちも、えー?

おんなじ部屋?とか言いながらも、

普段着のまま何となく全員横になり、

誰かが〇〇ちゃん、彼の隣行っちゃいなよ、みたいなことをけしかけてくることもありました。

焦ってしまってガキのような対応しか

できなかった本当にヘタレていた

夜のことを

思い出してしまいました。

その後も彼女とは仲は良いけど

ただそれだけの関係でそこは退社した訳です。


そんな彼女とどんな顔をして会えばいいのか

わかりもしませんでしたが、

私が在籍当時行っていた財界貯蓄の満期

と言うことでその処理の相談でした。


会社宛の電話、当時スマホはありませんから

しかたないのですが、

勤務時間でもあったので、その日の夜

某飲み屋で落ち合いました。


3つほど歳を重ねたその子は

美しい女性へと成長していました。


私を見つけると、あの時と変わらぬ

人懐っこい明るい笑顔で迎えてくれました。

全く何の屈託もない、救われる笑顔でした。


とりあえず、儀礼的に勝手に会社を

辞めたこと、それについて何の相談も

しなかったことを詫びると、

なーに言ってるの、散々悩んでたじゃん、

あん時すぐわかったよ、と豪快に

笑い飛ばしてくれたのです。


すごい子だ、と思いながら、

実は自分の思いは少し違う方を向いていました。

と言うのもその彼女からの連絡が来る

一年ほど前、私はとある病院で、

若年性パーキンソン病に間違いないですね、と

医師にしっかり宣言されていたのです。


そして彼女と久々に出会ったその日、

財形の話はあっという間に終わり、

意気投合した二人は過ちを起こすような

面白い展開にはなりませんでしたが、

またすぐ会おう、いつにするみたいな

近しい関係には近づいていたのです。


つまり自分が病気であることを隠し通して、

その気になれば手が届いたかも

知れない人生において重要な場面にいたのです。


このヘタレがその後どうしたかはおよそ検討つくだろうから省こうかな。

また次回。