ガレージキットをほぼ40年以上製作してて思う事。 | ◆完成品屋さんによるblog◇模型と猫◇組立彩色工房 岩崎◆

ガレージキットをほぼ40年以上製作してて思う事。

この前、師匠とも互いに関わる依頼品やらヤフオクで嫁に出すキット製作に関する談議で話をしたんだけど、共通するのは時代が変わっても進歩が遅々として普遍化しないなぁと。

 

部品として手、足、クビをぶった切って、パーツと称してた80年代。

             

部品として切断面の部位の工夫、タボと言う取付位置表示の凹凸をつけ始め、表面成形に気を使い始め、原型師ネームが最重要だった90年代。

 

2010年以後はジンワリ浸透を始めたデジタルモデリングで原型を作り出す人がで始めるが、デッサン等の理解が微妙な所為で初期はあまり褒められた製品は出て無かった記憶が有る。

しかし、関西での小規模GKイベが消えて無くなると、この手のディーラーさんの変遷は追えないので、後に豹変してて驚いた。

 

部品化の段階からしてかなりの変遷が有るけど、まぁ、普通にガレージキットフィギュアを買って、ちゃんと組み立てた事のある人なら、部品の構造の意味とかは理解が進むと思うけど、今の時代、モデラー経験と言うのをすっ飛ばして、「金儲けの為の手段」としての原型製作が可能な時代に成ってしまった感が有ると思う。

 

依頼品で数個作ったデジタル出力キットを造ったが、デジタル出力である以上、積層痕が出たままの状態で売り払うディーラーもかなり多い訳です。

以下の画像の奴は依頼品で預かったモノ、上から水着のパーツを着せる仕様なのでスッパですが、横に走る等高線の様な積層痕がビッシリ。

           ダウン

           

顔ですら細かく残ってて、これを売り付けるのですからね。GK製作歴40年越えだから 「うわぁ、めんどくさ」 と思うけど、まだ作れない程のモノでは無い。

研磨に拠る表面処理は、この様な製品の場合、「頃加減」と言うのが重要ですが、この頃加減と言うのは経験でしか得られ無い。

やり過ぎたら顔の凹凸、唇、目の輪郭すら消してしまうでしょうし、体なら肩甲骨、鎖骨、首の筋やら肘の突起、膝の複雑な凸面形状等も、考えないで研磨を入れたら削り落としてしまうでしょう。

 

一昔前ならフィギュア、メカ原型とは主にポリパテ、副次でエポパテ、プラ材等を使うので最初から手業で造形、丁寧な表面処理を施すのを前提としている為、常に磨きを入れて平滑性の維持やらゴム型製作時に脱型し易い様につるつるに仕上げてこその原型でした。

 

しかし、今この数年は、かなりのワンフェス等ガレージキットイベントへ参入する個人は旧来型原型師から明らかにデジタルモデラーへ変容して居るので、デジタル化しても原型は一応研磨処理して美麗化してから抜きに出すと言うヒトの方がまだ多いけど、細かい部品=前髪部分やら細い紙の毛先等が有るモノは、研磨も面倒な形状をデザインしてたりする為、出力精度を極限迄上げて積層痕を遺さない様にして出した製品を売る人も居ますが、普通は其処迄、「お客」 に気を使わない原型師が殆どと言えます。

 

一応扱った出力製品はちゃんと洗浄、二次硬化もしているディーラーでは有ったので良かったですが、普通の二液性混合型液体レジンではないので、出力レジンは無駄に硬い

サポ材から切り出すだけでも気を遣う。特に髪の毛、指先にサポ材が組まれてると、

安易な切断をするとサポ材と共に吹っ飛ぶからだ。ただただ積層させただけのモノなので、液体混合と違い、粒子のかみ合わせだけで組成してる様な為だろうね。圧の掛かり方如何で容易に折れる、飛ぶ。 ホント、メンドクサイ。

デジタル出力の欠点としては、データが途中でロストされて再現が止まってる部位も稀に遭遇する事が有る。

部品数が多い出力キットはディーラー自身で 「出来れば」 出荷=イベント参加前に=充分過ぎる程のチェック時間を採って確認作業をして欲しいモノだ。

購入者としては細部を研磨始めて、指先の第二間接から先が再現されて無いのを気付く時も有るんでね。

 

手捏ね原型、デジタルモデリング双方に言える事が、組み立て上、安易な組み立てを可能にする太く大きめのダボの採り入れだ。

 

ボークスや一部著名ディーラーでは軸打ちをしないでも取り敢えずすんなり嵌め込めて、ささっと組み上げた状態を確認できる程度の信頼性を持つダボの設計をしている所は有るのだが、九割のディーラー製品は未だに90年代当時のブキヤの丸タボか、5㎜角棒を浅く付けた様なタボが精々。普通には真鍮軸打ちした後の穴傷をシリコンゴムがたまたま読み込んでくれた時に再現されているだけと言うモノが多い。

 

今夏師匠の代理で購入し、今月制作し終えたこの大鯨さん、

イベント会場では数舜で要る要らないを判断する為、初見での繊細さを基準で見て、費用と見合う出来かを判断する訳だが、お高い為にディーラーとしては自信作なのだろうと思うのだが、師匠がいざ作ってみたら、部品の繋がりが判別し辛い程形状の

類似性やら、タボが設けて無いのでどれがどこに付くのかすら全て当該ディーラーHPの画像を見ないと?と成るだけと言う点で、不親切極まりない。

           

そりゃ最近のネットキッズにはそっちの方が効率的と言う認識だろうが、其処の代行屋の仕上げ品も部品毎に塗装して後で貼り付けて間に合わせたのだなと言う完成度。

イベント会場じゃ半時間も眺める人は居ないからな。ぱっと見で殆ど問題点は判らないだろう。

それに一面からの撮影なら、問題点が背面に有っても、気付かれずに済む。

かなり色々弄らないと組み上がらなかったと。

高い=超絶出来栄えとは成らないのがこの世界だなぁと。

コレが原型師が竜人氏や智恵理氏、片山氏や河合氏辺りならもっといいモノがまだ安く頒布されただろうなと。

しかし、今や彼等は裏方へ回るか引退してしまった。

 

模型誌は既にガレージキットなんて 「見捨てた過去の遊び道具」。

技術的な話なんて紙面を割く訳が無いわな。

デジタルモデリングには割いても、手捏ねなんて編集部には退化でしかないだろう。

パーツ割の工夫や、客のレベルに作り易いと言う概念での設計とかは、すっとばされてるだろう。

 

イベントも製作にしても、新規参入がドンドン増えてれば、それ迄のそのジャンルのオタクとしての共通認識ってモノも継承されず、陳腐化し、忘れ去られるのだろう。

普通の模型の購入でさえ、今やキャラクタープラモは小売店、量販ですらマトモに買える機会が消滅している。

明らかに過剰生産のこぼれ物が棚に並び、五年前の頃の様な多様な種類の中からチョイスすると言う楽しみ方が消えてるからね。

この状態を感じたいなら、ガンベへ赴き、イベント参加の如く時に行列に並ぶとかのストレスを耐える必要を求められると言う時代に変容したからね。

今や買いたい機種のアニメプラモは、その様な専売店かネットショップへ逝くしかなく、「必ず欲しいモノが買える」なんて事は”甘え”に近い感じだ。

ホント、プラモもガレキも販路は隘路化したなぁと思う。

 

歳の所為も有ろうが、がっつく気力が維持出来るのは50代迄だなと思った。

還暦回るとね、もう面倒。

転売にがっつく若い奴等の熱が暑苦しくて、ホント褪めてしまった。

ワンフェスは毎回、開催時の手際の進化が無いので呆れてたし、終に今年は丸投げして開催してるから「終わったわ」と。

さて、来年は如何に成るかねぇと。

復讐ワクチンが実施されて、どの程度の莫迦者共が打って、周りに振り撒いているかな?

故に冬は行かない。アブナイから。夏はそのまま世界が平和ならねぇと。