只のモデラーが完成品製作代行を目指した過程 ③

完成品販売ディーラーと言うモノへ誘われたのは92年の頃と思う。

それまでゼネプロが主宰する大規模ガレキイベントのワンフェス以外ではホビージャパンのHJフェス程度しかない80年代は、関東まで出て行くと言う発想が無かった。

ガレコンと言う関西での小規模イベントも有ったので、わざわざ関東まで行く事も無いと言う事も有った。竜人氏や智絵里氏も来てたりするからだ。

又、東京迄の移動費が高くつくし、行った事も無い土地へ一人で行くと言う恐怖？も有ったと思う。

しかし、グループに拠る行動なら、助け合う事も可能なので行くかと言う気にもなる。

丁度92年は第一回のジャフコンが水道橋のドーム球場下のクリスタルホール？で

開催されると言うので、名古屋の友人達と現地で合流と言う予定で出て行く気に成った事もある。初めて夜行バスに拠る移動を経験。

それが有ったから翌年のワンフェスへの完成品販売ディーラーでの参加と言う事も

行く事についての躊躇が無くて済んだのが幸いしたのだろう。

92年の段階でちょうどⅠ氏がＶ店店長にフィギュア塗装の上手い常連紹介してと依頼されていて、私を紹介したからだ。

三名参加だが、一人空席だった為だ。

93年は初めて原型ディーラー参加、完成品販売ディーラー参加が度重なる事と成る。

初めてのジャフコン参加で名古屋の友達連がディーラー参加しようと言う事で誘いがあり、実際に原型を作り始め、同時並行で完成品販売ディーラーとしての品目も

作ると言う事を平然としていた。若くて集中力の有る頃は、無茶が出来たのだなと。

ディーラー参加申請までに何を作るかを決め、ポーズは如何するか、スケールや

ポーズから来る部品分割数を如何するか、シリコンゴム型を作る際に如何言う封入

でキレイに抜き上げられるかをシミュレートしたものだ。

並行して完成品も何にするかで調整し、ボーメの作品を三人で飾ると言う事で落ち

着き、展示品となるキットをそれぞれ購入、会期までに仕上げておくと言う事に成った。

作ったキットが売れてくれる事もうれしかったが、完成品が売れてくれるのもうれしかった。特に完成品はキットよりも喜ばれた記憶がある。

90年代頃になると20代後半、会社勤めの故もあり、模型ばかりに時間を傾注できない縛りが出て来る。休みの日以外で作業が進まない事が当たり前になり、ようやく仕上げたフィギュアが即買われて行くのはある種の快感でもある。

手間の掛かるのは今も昔も変わらない。私以上に作る事に時間が割けない人も関東では多い感じがした。

自分じゃ出来ない、塗れないモノの完成品が今の様にメーカー製品が溢れんばかりに供給される時代では無かったからね。

特にボーメ氏の様な巨大フィギュアは、氏独特のいい加減な表面処理の上に作られたモノだと、肌の凸凹が年を経る毎に酷くなって行った原型複製品だと処理が大変

だったからねｗ。海洋堂の型抜きも実にぞんざいで切断面の太さの差があるなんて当たり前だったからね。どんだけ無理くり抜いてたんだと。

高価なリューター装備やエアブラシ機材を買って作ると言う程、覚悟を決めて模型を

作ると言う事が出来難い時代＝この手の装備が一式10万軽く必要だった時代＝だからだろうなと。

2010年代頃にリューターがメーカーに拘らないなら一万円、エアブラシ一式も二万も

有れば揃う時代が来るなんて思わないよなと。

敷居は私が始めた頃よりは低くなったが、逆に考えれば、それだけ一般化？した為に価格が下がったとも言えるが、愛好家人口が減ったとも言えなくもないかと。

Ⅴ店やワンフェスで完成品の製作スキルを上げると共に、エヴァブレイクの頃に、

会社へ行く環状線越しに模型ショップの窓看板が目に付いた。

ロムガレージ店であった。

此処ではガレージキットの製作代行を請け負っていて、製作者も募集していた。

此処で常時仕事としての完成品製作代行を受ける事にした。

仕事の合間に製作なので、一つの依頼を仕上げるのに三月程の時間を貰った。

此処での仕事でクレームを貰う様なヘマはしなかった。

会社での立場が中堅と成った段階では、残業をしないで帰れる程、印刷仕事はまだ

ヒマなモノでは無かったので、三月の時間短縮はとても無理であった。

ロムでの製作代行は98年まで続いたが、この頃になるとガレージキットの凋落が見え始め、メーカーが出すガレキのかなりの部分は商品宣伝が出る度に人気の低迷が顕著に成り、店頭では死に在庫が何処も増え続ける様になり、仕入れも憚られる

様に成れば、企業とは簡単に不良事業は切る事を断行する。

ロムガレージ店とは四年程の付き合いで幕を閉じた。

しかし、此処に出入りしていた常連の方が姫島の方で同様の模型店を開くと言うの

で99年から其処から仕事を貰う様になったが、やはりガレキ人気の低迷の為、三年

程で店じまいした。

この後、吹田市の亜空間と言うショップで同じ様に代行の仲介をしていた店が有った

ので厄介になったが、二年程で終了。元の店舗位置から江坂駅に近くなった場所へ

店を移動させた段階で代行の仲介を辞めたと。

元々此処の経営者はコトブキヤでショップ経営の経験を積んで帰って来た人達で、今思えばブキヤの絡みで代行をこの頃から違法行為と言う吹聴を受けたのだろうと。ご兄弟経営だったが、弟さんの方が明らかに此方を嫌う素振りを見せていたか

らね。名古屋の友人群で著名原型師と仲良くなった人が見せた態度と同じだった

のでスグに判った。

大阪の心斎橋にブキヤが自社ショップを持った時に訪れたら、店内ビデオで自社お抱えフィニッシャー殿に個人の製作代行についてのネガティブキャンペーンを盛んに展開していましたからね。

だから2010年にワンフェスのパンフに弁護士様のご注進と言う形で今後積極的に潰しに掛かるぞと宣戦布告をしていたのだろうと。

八年掛かったが、2018年に海洋堂を説き伏せたのだろう。

企業のコンプラを盾にすれば、違反者を排斥する事も容易だったのだろう。

早々と説き伏せられていれば、私が離婚後参加復帰を師匠達から勧められる事も

無く、2015年からの四年八回の思い出も得る事が出来なかったろう。

フィギュアの完成品が売れると言うのは、私達の様な個人製作者が居なかったら、

企業が乗り出す気を持っただろうか？と思う。まぁ遅かれ早かれなのかもだが、あの

当時、模型の完成品なんて、メーカーが手掛けるならどの程度の手抜き加減で提供すべきか目測も着かないだろうと。

実際、初期のメーカー完成品の出来の悪さは、ホント見るも無残であったからな。

エヴァが流行ったからフィギュアも受ける等と確信が持てるとは思えない。

手間が掛かる上に当初は中国で作らせる等と言うのも、あの当時のレベルでは躊

躇っていただろうからね。

個人業の隆盛が有ればこそ、偵察をせずに出せたとも言える。

しかし、利権が有れば独占を企むモノが出るのも又事実。

凡そ勃興期から問題視されもしなかったモノが問題視され排斥されるのも、遵法精神と言うよりは、権益の自社への囲い込みの為だと思う。

ま、遵法と言う割には企業の方がエロフィギュアをバンバン出すと言うのは如何言う神経をしているのやらと私には眉唾であるがね。

ま、どの道フィギュアと言うモノはオンデマンド生産にならないと無駄だけが作られるだろうから、デジタルモデリングの進化に拠って最少数生産、発注数しか造形しないと言う生産方法が何れ主流化すると思うけどね。

前にも書いたけど、ガレージキットとしての頒布は時代遅れか懐古主義となり、フィギュアと言うモノは、注文生産品しかないと言う事になるかもね。

版権についてもそれを見越した上で造形に関しての新しいルールを作らないと、ダメ

な時代に成りつつあると思う。

デジタルモデリング対応の販売に関する新ルールが無いと、何れ個人の造形は出来なくなるだろうなぁ。

メーカー完成品と遜色ないモノが出来てしまう時代がすぐそこまで来ているのだから。

製作代行なんて、あと何年続けられるかねぇと思うよ。来年還暦だぜ。(^^;

今は「イベントからの排斥だけで　済んでいる　だけ」なのだから。

私より若い代行者稼業の人が、家族まで持っている人で、ツイ等では受注が好調

なのを誇って居たりするけど、一寸先は闇、これが現実。

個人在庫を持っていても、ヤフオク等での販売すら法規制の対象となった場合、

依頼人だけが頼りの綱となれば、かなりヤバいと思う。依頼人も毒を食らわば皿まで

なんてタイプ、一人でも顧客に居たらイイ方だからね。

大概はある時急に醒めて、辞めちゃう人が殆どだからね。

ガンプラの完成品だって、ガンスタ等の腕自慢サイトへの投降者が今は多数居る時代だから、通り一遍の仕上がり程度ならもう売れないからねぇ。

歳を喰うと、若い頃の様に集中して製作を出来なくなる。

時間が掛かる様になるからね。眼も衰えるから細かいモノが見づらくなるし。

肩こりも、疲れの溜まり方も早くなるので長時間製作に費やす事がホント辛くなる。

ホント、これから先は更に闇の世界かもね。趣味の界隈も。

此処の界隈に居残る限り、界隈の利権の思惑に左右される事、請け合いだから。

法の厳格推進を推す規制者が居ると言う事を理解した上で趣味で留めるか、仕事にするかだな。

生業代行は関東のモデラー、特に雑誌社に繋がりのある人にはすこぶる偏見の目でみられるからね。

アイアン沢田氏位のレベルなら、まだ尊敬される面もあるのだろうが、市井の有象無象の製作代行程度なら、彼等模型誌出入りのモデラー達には、模型を危うくする違法行為者でしかなく、ただ、自分達の為に完成品を提供する、企業側のデコマスを

任される位の腕前なら「イイ製作者」だとして仲間入りさせる程度には下衆な連中だと言う事は判ったがね。