■売上よりも粗利確保
経営は売上よりも利益を安定させる事を最優先に考えるべきです。
売上至上主義は時には悲劇を招きます。
先日、クライアントからご紹介頂いた経営者様と面談を実施してきました。
地元ではそこそこの規模で展開している食品小売業さんです。
営業という訳ではなく、経営全般における問題を抱えているので是非、相談を聞いてほしいと依頼がありました。
4期分の決算書を分析しながら、面談を実施しましたが、経営者から出てくる言葉は常に「売上を上げれば上手くいく、売上が上がれば全て解決する」というものでしたが、本質は全く違います。
(小売業の様に売上が現金で入る場合、日々、手持ちに現金があるので売上至上主義になりやすい気がします)
この会社は売上を伸ばす為に、低粗利の販売手法を使い、その為に人員を増やし(現場からの声)、更に不採算事業に関してもいつか売れるだろうと楽観視している状況でした。
結果として販売管理費を吸収できない・・・営業利益・経常利益は数千万単位の赤字が続いているにも関わらず、何故、資金が減るのか理由が分からないと嘆かれていました。
これほど分かりやすい業績赤字の企業も久しぶりに拝見しましたが、これは他人事ではありません。
日常に追われて、売上(目先)を追いかけてしまうとこのようなことはあなたの会社でも起こり得るのです。
あなたの業種が役務提供・無形サービス・手数料ビジネス・サポート系の業種であれば、売上=粗利と考えられるかもしれませんが、粗利100%はあり得ません。広告費、外注費を掛け過ぎれば粗利は下がるはずです。
あなたの会社が追うべきものは売上ではなく利益なのです。
■利益を安定させる為のチェック項目
経営で重要なものは利益であるとお伝えしてきましたが、そのためにはどういった施策を取るべきでしょうか?
やはり自社のビジネスモデルを数字から計測・判断したうえでどのような対策を取るか考えなくてはいけません。
時には売上の優先度を下げる必要があるかもしれません。
(実際のところ、結構な割合で売上よりも大事な点を着目するべき事は多いのが事実です)
先ほどの事例企業も別の売上アップのコンサルタントにお金を払い指導して貰いながら業績赤字状態です。
売れば売るほど利益を圧迫している事実に経営者が気づいていなかったのです。
これでは、いくら社員を叱咤激励しても業績は改善しません。
このコンサルタントも決算書までは確認してないでしょうし、経営者から指摘事項もないので、量をさばく販売方法に特化していたのでしょう。
これだと何の為に経営をしていたのか分からなくなります。
では、どのようにして自社のビジネスモデルにチェックを行い、利益を安定させるのか?
何を優先度としていくべきなのか?
利益を安定させるためのビジネスモデルのチェックポイントを記載していきましょう。
チェックポイント1:優先度高:「経営」の視点:
①粗利率の変動における販売方法の確認(粗利額)
②利益に対しての人件費割合(幾らの価値提供)
③売上獲得関わる販促コスト(顧客獲得コスト 広告・チラシ)
チェックポイント2:優先度中:「営業」の視点:
①成約率と販売体制の確認
②顧客との関係性・リピート率(商品)の状況
③買う条件「保証」の効果測定
チェックポイント3:優先度低:「マーケティング」の視点:
①集客に関わる時間と効果(プロモーション活動)
②理論優先の学習
③ブランディングという名の自己満足
全て経営に必要な要素ですが、あえて優先度をつけるとしたら上記の様になります。
小規模(10名以下)の組織もしくは、1人社長で営業を必死にやっている企業経営者の方には是非、お勧めします。(即実践⇒成果を出すという事が前提)
それぞれ、3つの視点を俯瞰し、自社のビジネスモデルを把握・理解していく事が大事です。
組み合わせをしながら考えても良いでしょう。
先ほどの食品小売業の事例で言えば、
優先度高:「経営」の視点:
①粗利率の変動における販売方法の確認(粗利額)
②利益に対しての人件費割合(幾らの価値提供)
を優先して分析・現状の見える化を推進するように依頼しました。
売り方・提案商品も含め、如何に現状のやり方が損失を生むという事を「計数」を活用して客観的に見てもらう必要があるという事です。
当然ですが、事業リストラを視野に売上アップコンサルタントの方にも卒業していただくくようにアドバイスしました。
まずは、身軽な状態を作らなければ、先に進めません。
更に、
優先度中:「営業」の視点:
①成約率と販売体制の確認
②顧客との関係性・リピート率(商品)の状況
に関しても人気商品(高確率商品)の増産体制・強化対策も検討の視野にいれながら、顧客との関係強化・信頼される商品提供者としてのポジションを目指して行く方針を提案しました。
全ては上記、「経営」の視点を優先するが前提です。
逆に言えば、その決断ができなければ再建は不可能だと感じましたので、その旨を率直にお伝えしました。
そんな話を60分程度した段階で、最終的に経営再建の依頼をいただきました。
諸条件を受入れて頂いたので、これからお互いに信頼関係を築きながら改善を進めて行く流れになりそうです。
■理念を共有してからコンサルスタート
これから、現場の社員さんとも向き合い、経営改善の必要性を説いていく事になります。
現場としては経営者が売上を優先している以上、売上を上げれば責任を果たしていると感じているでしょうし、スタート段階では理解をして貰う為に少々の反発も覚悟しなくてはいけませんね。
しかし、会社の理念を守り続ける為に、必要性を説き、協力を仰ぐ事になるでしょう。
あなたの会社でもここまでではないにしても、共通した部分は無かったですか?
売上だけを社員と共有し、売上が全てと認識させては教育としても危険です。
それを防ぐためにも事例でご紹介した「経営」の①、②と「営業」の①、②の視点4つは一度チェックを入れてみてください。