東京都調布市の、こうご司法書士事務所のブログです。
今回は第三回目になりますが、何回かに分けて、被相続人名義で表題登記だけが入っており、権利部の登記がなされていないような場合に、どのような登記をすればよいかを考えています。
具体的に言うと、今回考えていくのは、
被相続人が土地と建物を持っていた
土地には、被相続人名義の所有権移転登記が入っている
建物には表題登記しかなかった
相続人は配偶者と子2名だが、そのうち長男が土地と建物をすべて取得する
被相続人は調布太郎
長男は調布一郎
というようなケースになります。
このようなケースでは、まず一件目で、建物について所有権保存登記を行い、二件目で土地についての所有権移転登記を行うことはすでに書いた通りです。
第三回目の今回は添付書類について考えていきたいと思います。
〇添付書類
一件目の登記、建物の所有権保存登記の添付書類は、以下の通りです。
相続証明情報(原本還付)
住所証明書(後件添付)
代理権限証書
課税明細書(後件添付)
二件目の登記、土地の所有権移転登記の添付書類は以下の通りです。
登記原因証明情報(原本還付)
住所証明書
代理権限証書
課税明細書
〇相続証明情報及び登記原因証明情報について
この登記で、相続証明情報と登記原因証明情報は全く同じものです。
具体的に言うと、
戸籍謄本、除籍謄本等(被相続人調布太郎の出生から死亡まですべて)
戸籍謄本(相続人全員の現在の戸籍)
住民票の除票(被相続人調布太郎のもの)
遺産分割協議書
印鑑証明書(相続人全員のもの)
が、相続証明情報と登記原因証明情報になります。
書類としては全く同じものですが、所有権保存登記と所有権移転登記で、果たす役割が異なっています。
所有権保存登記においては、これらの書類は、調布一郎が表題部所有者の相続人であり、かつ、保存登記をすることができる人物であることをることを示すための書類となっています。
言い方を変えると、不動産登記法74条1項1号の「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」であることを示すための書類になります。
一方、所有権移転登記では、所有権移転の登記原因である相続が発生したこと、相続の結果所有者となるのが調布一郎であることを示すための書類です。
ですので、前件添付や後見添付で書類の添付を省略できないのが原則です。
しかし、全く同じ書類を、一件目と二件目に添付しなくてはならないのでしょうか?
このような場合、たとえそうだとしても、原本還付処理ができるので、原本は各一通でも大丈夫です。
また、登記原因証明情報として添付するときは、相続関係説明図を作って、添付すれば、戸籍等のコピーの添付は不要になります。
問題は、所有権保存登記における相続証明情報です。
保存登記の相続証明情報には、相続関係説明図の添付を持って、戸籍等のコピーが不要になるような扱いはない(はず)です。
従って、私は、これまで、戸籍も含めたすべての書類のコピーをとって、原本還付の処理をしてきました。
ただ、本当にこのような処理が必要なのか、疑問に思っています。
後件の所有権移転登記に添付するものと全く同じものを添付するのにもかかわらず、コピーする必要があるのか疑問がありますし、戸籍のすべてをコピーする必要があるとしたら、コピーするほうもコピーを確認するほうも手間がかかるからです。
ですので、
①相続関係説明図の添付をもって、便宜上、相続証明情報の添付を省略してよい
②法定相続情報の添付をもって、、相続証明情報の添付を省略してよい
等の扱いがあるのではないかなと思ったりもします。
また、私の知らない先例があるかもしれないので、知っている方がいたら、教えてくださるとたすかります。
〇遺産分割協議書について
遺産分割協議書は、普通の所有権移転登記の時と同様に作成すれば大丈夫です。
保存登記によることに触れる必要もありませんし、調布一郎が建物を取得することが遺産分割協議書に書かれていれば、調布一郎を所有者とした所有権保存登記をすることができます。
〇その他の書類
その他の書類についは、通常ン相続登記と同様なので、説明を省略します。
〇次回予告
次回は、登録免許税についてお話しできればと思います。
所有権保存登記の登録免許税の計算は、通常は、所有権移転登記と異なりますが、本件のような場合は、どうでしょうか??