「老眼」


夫婦はメガネを外す機会が少々あるようになった


若い頃は会社のひとが


「メガネを外すのってなんだかカッコいい」


と思っていたんだけどな


老眼がきてしまったか…


夫婦は同級生だ


老眼の進み具合も同じくらいと見ている


お互いメガネを外すと「クスッ」と笑うようになった


時間は無常だ


お互い年をとりましたな







「あともう少し」


家までの道のりは


時に長く感じられる


風が強いときたら尚更だ


とぼとぼ歩いて行けばたどり着ける


今日はとぼとぼ歩いて行こう


惰性でもよしとするか



「こっちゃん」


こっちゃんはなんでもお菓子があると


「味見してみて」という


ケーキにシャトレーゼのかりんとう饅頭


クッキーやゼリーまでほとんど全部だ


しいて言えば先輩や友達からもらったお菓子は味見させてくれない


だけどもうママの私はできなくなってしまった


糖分を控えるためだ


「味見できなくなっちゃった」


と言ったとたん一瞬こっちゃんの顔が見たことのない顔をしてこわばる


悲しい寂しいえっ!の混じったような顔をした


「味見する?」が当たり前になっていたのだ


私も当たり前なっていた


なんならその言葉を待っていた


だけどもうしばらくはできない


かわりの案を出してきたが心を鬼にしてこういう


「気持ちだけ受けとっておくね」


ではとばかりに「かんてんパパ」はどうと?


思わずうなずく


「いいよ 食べよ!」


こっちゃんの顔がもとにもどった




「やさしい手」


せなかをさすってくれる手のひらが


あたたかな光となって


「もう大丈夫だよ」


と言っている


にぎってくれる手のひらが


「大丈夫だからね」


とにぎりしめている


手は色んな言葉をもっているんだね


やさしい手だけが知っている言葉なんだね











「てんとうむし」


幸せも不幸せも


全部私が決めちゃうんだもの


てんとうむしを見かけたよ


君も幸せ運んでいるね


写真撮るまで動かないでいてくれるし


どんなにピンチでもこうしてサインを送ってくれる


あゝ 人生はなんて素晴らしいんだろう





「けいちゃん」


「けいちゃん」って言われると


"きゅん"としてしまうのは私だけ?


とくに「い」が最高!


君だけが呼んでくれる「けーちゃん」でも


「けいこちゃん」でもなく


「けいちゃん」


LINEで見ると尚よい「けいちゃん」


たとえ私がおばあちゃんになっても愛してくれますか?



「右手の魔法」


右手が思うように動かない


さては魔法にかかったか?


それとも夢?


アドリア海でも行ったみたいに


泳いでいるような


不思議な気持ちで


ゆらゆら ゆらゆら


ふわふわ ふわふわしてる


現実とは思えないほどつたなくて


今とは思えないほど動かなくて


もうどうしようもないけれど


あなたがそばにいてくれるだけで満たされていく






「バナナのくさったところ」


おばあちゃんがむかしよくたべてくれた


バナナのくさったところ


「やらしいな〜」といいながらも


うれしそうにたべてくれた


どういうわけだかしらないけれど


そのかおはわらっていた


いまはいないけれどいるおばあちゃん


だいすきだからおもいだしたし


バナナたべるたびにおもいだす


「キッチンとリビングの間」


「聞こえないよ」と君がいう


「かみ合わないね」と私がいう


でも笑い合っている


どうやら夫婦は相性がいいらしい

(私が言うのも何だが)


黄色と黄緑色の論争が二人の間を駆け巡る


まるで二人は恋人のようだ

(自分で言うのもなんだが)


彼はキッチン


私はリビングにいる


反対だったけれど


まあいいかぁ




「こころ」


小学生の頃、ノートのページを開いたところから使っていた。


ぱっと開いたページの世界が嬉しくて、わくわくしていた。


晴れにもかかわらずカッパを着ていた。


誰の目を気にせずわくわくしていた。


こころはわくわくするほど面白い。