大腸癌になってから、
一番、参考になった著書。
少し古いものだけど分かりやすい説明だった。
最後まで読めば大腸癌になって、
どう生きれば良いのか、よく分かる内容だ。
医療講演(平成15年11月23日)
横浜市立大学総合医療センター 中央手術部長
助教授 大木繁男
大腸がんの再発・転移の問題について。
本日のテーマは大腸がん再発・転移の問題です。
これは非常に難しいのですが、出来るだけ解り易くお話したいと思います。
ジャイアント馬場さんは、残念ながら大腸がんで亡くなりました。
大腸がんが肝臓に転移して肝不全で61才でした。
ジャイアント馬場さんをインターネットで見ると15,000件くらいのメッセージがあり、大変に残念だったとか、ジャイアント馬場さんのプロレスを見て元気を出して勉強に励んだと云う子供の話がたくさん出ておりました。
中田義直さんは音楽をされていた方なのですが、「雪の降る町を」「もういくつ寝るとお正月」「小さい秋見つけた」「メダカの学校」 「夏の思いで」などあり、横浜に住んで、神奈川県でたくさんの音楽の指導をおやりになった方で、「おかあさんていいにおい」の童謡もあります。
この方も大腸がんが見つかった時かなり肝臓に飛び火していました。
私は外科医になり35年間ずっと大腸の仕事をして来ました。
医学もだいぶ進歩して来ました。
相当に進歩して来ています。
私は大腸がんでは死なせたくないし、自分も大腸がんでは死にたくないと思っています。
大腸がんは早期の小さなものから大きなものまで色々あります。
35年前は手術をした半分くらいの方しか生きていられなかったし、ロシアでは手術して5年生きられるのが、約10%で残りの90%は再発して亡くなっておられます。
日本は相当進んでおり米欧と同じかそれ以上に進んでいますが、残念ながら100人手術すると30人くらいの方が再発されるようです。
再発される方は3年以内に再発し、3年過ぎての再発はほとんどないようです。
数人いますがほとんどの方が3年以内に再発しています。
早期のものと、少し進んだもの、相当進んだものがあります。
手術後の5年生存率は、腸の壁を越えていないものですと90%、腸の壁を突き抜けたものですと86%、リンパ節転移があると70%です。
リンパ節転移がある方では30%に再発が起こります。
どういうところに再発するかと云うとジャイアント馬場さんも中田義直さんもそうですが、肝臓転移が術後20%に発生し、最も多いです。
しかし外国では手術後の局所再発が多いです。
日本の場合には少し大きめに取るので、局所再発は起こりにくいようです。
局所再発とは、もともとがんがあった場所で再発することで、日本では10%です。
どうして肝臓に転移するか。
腸に出来たがんは、血液が動脈を流れて静脈に戻って来ます。
戻ってきた血液にがん細胞がおよいでおり、血液は全部肝臓を通ります。
腸に流れた澱粉、蛋白質、脂肪等の栄養分は肝臓で分解合成されて全身にまわります。
その血液の流れに従って肝臓にいきます。
肺は肝臓を通過した血液を全身に廻し静脈を通って心臓に入り、また肺を通って心臓に戻り酸素を補給して全身を回ります。
網の目の様になっているのが最初に肝臓で次いで肺のため、肝臓から肺に行くわけです。
それ以外に脳、骨、腹膜、卵巣、皮膚とかに飛び火する事ありますが、再発の順序は血液栄養分の流れから最初が肝臓、次に肺、脳、骨...... になります。
再発するとどういう症状がでるかと云うと、 肝臓に転移しても何の症状も出ません。
痛くも痒くも疲れもありません。
局所再発は元々がんがあった場所に、がんが出てくるもので、 しこりが生じたり、痛みが出ます。
肺に転移した時も何の症状も出ません。
脳に転移した時は頭痛、吐き気、食欲不振、半身しびれ等 、出ます。
骨に転移すると、腰が痛い背中が痛い等症状が出ます。
腹膜転移も何の症状も出ません。
女性の卵巣転移も何の症状も出ません。
皮膚に転移するとしこりが出て来ます。
どうしたら再発を見つけられるか。
35年前は見つける方法はありませんでしたが、今はかなり進んでいます。
大腸の治療は日本が一番進んでいます。
肝臓転移はCT、超音波。
元々、がんがあった場所のがんはCTやMRI。
肺に転移したらレントゲン写真やCT。
脳転移もCT、骨の転移もCT、腹膜、卵巣転移もCT。
このようにCTが再発が起ったか見つけるのに最も良い診断方法になっています。
手術が終わったら、通院は5年を目安に行います。
6-7年かかる方、長い方は10年と云う人もいますが、基本的には5年を目安にやります。
3年位の間に、何か病気があれば出て来ます。
どんな事を見るかと云うと全身の診察、特にお腹の診察、血液検査、貧血、 肝臓あたりのCAとか、胸や腹のレントゲン写真CT、エコー検査を行います。
大腸のカメラ検査も2~3年に1回行います。
CT検査料金 は3~5万円かかります。
3割負担で約1万円になります。
全身の診察では栄養の状態、首足の付け根のリンパ線の腫れ具合、お腹の腸の動きとかストーマの状態を見ます。
CEAについて、手術した方がCEAはいくつですかと質問する人がいます。
CEAはがん胎児性抗原と云い、がん細胞が作り出す蛋白質です。
大腸がんの50%、胃がん、肺がんでも出ます。
大腸がん再発の場合は6割くらいが出ます。
再発してもCEAがプラスにならない人も半分近くいます。
手術直後の3年位は3ヶ月に1回CEA 検査をやります。
5以下が正常値で、5を超えたら何かあやしいとなります。
がんが2cm位になるとCEAが出ます。
問題はこの検査で CEAが出ても、がんが何処にあるかわからないことです。
血液の中にがん細胞があっても何処にあるかわからない。
CAE値が一定の所を上がったり下がったりしている時はがんがないと考えられます。
煙草を吸っている人には良くそういうことがあります。
3ヶ月毎に少しずつCEA値が上がって来る時はがんがありそうだということになります。
CT検査は非常に有効です。
CT検査は、市大病院では肝臓だけ見ないで、首の甲状腺から 胸、肺、心臓、肝臓、膵臓、腸から骨盤、前立腺からお尻まで全部調べます。
昔はCT検査に30分掛かりましたが今は5分程度です。
造影剤を使うと鮮明に出ます。
肝臓は栄養をたくわえたり、解毒をしたり血液を固まらせる成分を作ったり、蛋白質を作ったり、色々な合成をしている所です。
肝臓は重要な臓器で一部を切除してもまた大きくなります。
肝臓が3分の1残っていれば、元の機能に戻ることが出来ます。
腸や胃は、 切ったら戻っては来ません。
再発の治療方法としては、手術、放射線、抗がん剤、免疫療法、温熱、遺伝子治療があります。
確実に効果あるのはもう一回手術することで、抗がん剤、放射線と云うと少し落ちてきます。
再手術出来るか否かは肝臓がんの場合10個ぐらいは、手術で取る事が出来ます。
肺がんの場合でも3~5個なら取ることができます。
50も100も有った場合は困難です。
局所再発も骨とか、大動脈、坐骨神経に及んでなければ取る事が出来ますが、背骨に付いているとか、大動脈に付いている時は手術が困難です。
脳転移も1個や2個でしたら可能です。
卵巣転移も可能です。
骨とか腹膜に再発したら手術は困難です。
大腸の場合は肝臓に一番再発転移し易いようです。
30年前は肝臓の手術は出来なかったのですが今なら出来ます。
肝臓を手術して5年生存率は6割程度です。
残りの4割の方はまた肝臓とか肺とかあちこちに再発する可能性があります。
肺も同じです。
局所の場合半分位再発します。
抗がん剤の使い方として比較的弱い抗がん剤UFT、フトラフール、5FUは主に再発予防用です。
数パーセント生存率を向上させる効果が期待出来ますが下痢、爪の黒色化、皮膚のかさかさなど副作用もあります。
止めれば1~2週間で副作用も消えます。
比較的強いマイトマイシン、カンプトテシンは入院して使います。
副作用は吐き気、嘔吐白血球減少です。
保険で認められているのは5種類あります。
白血球の減少は免疫力低下につながります。
白血球は普通の人で3000 ~8000あります。
抗がん剤で白血球が減り、1000以下になると熱を出したり感染したり300~500になると空気中に菌のいない部屋に入らないと肺炎を起こして命が危うくなります。
血液とか白血球は骨で作っています。
骨を刺激して白血球を増やす薬もあります。
再発した大腸がんに対する抗がん剤の効果は、人により効く人と効かない人があります。
専門家の治療が必要です。
効果はどうかと云いますと、がんが完全に消えたり、半分くらいに小さくなったりするのを有効率と云いますが、100人やれば20人程度に効果があり有効率は20%です。
副作用がありますから、専門家がしっかり見てやる必要があります。
放射線治療は肝臓、肺に転移した時はあまり使われません。
主に局所再発、骨転移に使います。
脳転移の時ガンマーナイフと云うものもあります。
20%位の効果があります。
強い抗がん剤を使う時には専門の先生が絶対に必要です。
30年前は外科の先生は肺、肝臓、 胃、大腸など一人で全部診ていました。
現在はそれぞれに専門家がいます。
放射線治療、 抗がん剤治療等それぞれ専門医がいます。
痛みを取ったりする緩和医療の専門家も育ちつつあります。
多数の看護師、十分な設備、CT、MRI、放射線治療装置は1台で10億円もします。
PETはがんのある所だけを映す高価な機械で神奈川県に3台しか有りません。
横浜市大、脳血管 センター、東海大学に各一台です。
このような高価な設備機械が無いと再発などのがん治療は出来ない事になります。
どのような病院で、どのように診て貰うか関心は高くなっています。
読売新聞が安心な病院選び、専門医のこと、手術後の生存率などの記事をだしています。
インターネットで調べても病院ごとの成績は一部の病院しか出していません。
病院の情報を得る事は非常に難しいようです 。
大腸がんの手術を受けて定期検診を5年位受け、この間に肝臓がんなど再発した場合、その病院で手術出来れば良いが、出来ない時は他の病院を紹介してもらう事になります。
国の施策で保険を使える医療機関が四つに分けられました。
1.高度医療機関
2.一般病院(地域支援病院)
3.開業医
4.老人の介護施設
横浜の市大病院の場合700人入院中で、入院から退院まで平均17日以内です。
大腸がんが再発し、治療効果がない場合どういうことがおきるか。
肝臓に転移の場合、 痛みはないが全身衰弱、栄養不足、また肺に転移した場合も痛みは無いが、全身衰弱、呼吸困難が生じます。
局所再発は骨盤の中に、足にいく坐骨神経があり半分ぐらいの人は相当な痛みを感じます。
痛みは専門医に正しい処置をしてもらえば取ることが出来ます。
痛み止め鎮痛剤の処方箋は難しく、一般の先生には手におえないところがあります。
骨に再発も同じです。
腹膜再発は腸閉塞のような腸の癒着が起きて食事が取れない事も起ります。
緩和医療も進んでいます。
一生懸命やっている先生もいます。
川崎市民病院、聖隷横浜病院(旧国立東横浜病院)、衣笠病院(横須賀) 等です。
市大センター病院にも良い先生がいますが、専用の病棟が無く、設備が追いつかない状態です。
現在内科の病棟を借りてやっています。
在宅医療の専門医も少しずつ増えてはいます。
新聞を見ると、どこの病院が良いのか解らないと言うような話を聞かれると思います。
大腸がん手術して5年経過、再発もなく、元気であり、通院してない人はどうしたら良いか。
普通一人の人間のがんに罹る率は20~40歳ではほとんどありません。
40歳以上から出て来ます。
120歳では100%がんに罹ります。
女性の平均寿命の82 歳では1/3が、がんで死亡、発生率は1/2 です。
1/6はがんは治療で治っても、心筋梗塞など他の病気で亡くなった人になります。
大腸がんの直った人も、まだがんに罹ってない人も、これからかかる確率は同じです。
従って一度治った人も同じように注意が必要です。
日本ではがんで死亡する人は30万人で、肺がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、すい臓がん等で、女性はこれに乳がん、子宮がんが加わります。
市大病院では大腸がんだけなく周囲の胃、肺、肝臓など調べ注意深く診ています。
健診は身長、体重、血圧、尿等身体全体の健康状態を診ることで、これでがんを見つけるのはむずかしいようです。
検診は目的を決めて調べるもので、がんはこの検診で見つけます。
健康保険はききません。
がんの検診をしている所は横浜市民検診センター、県予防 医学協会、県労働衛生協会、京浜検診センターがあります。
10/1付け朝日新聞に国立がんセンターで受診公募し、最新機器による食道、胃、前立腺等13の項目のがん検診で 、男性は 9 . 5 万円 、女性は13万円の費用がかかると出ていました。
膵臓がんは進みが速く、10年前迄は5年生存率0%、今も10%と非常に難しいものです。
がんについては誰しも早く見つけて確実に直したいと思っています。
治療実績は日本が一番良いと思っています。
最善を尽して直したいと思っています。
がんは何故再発するかと云うとがん細胞が残っているからです。
20~50ミクロンで白、 赤血球と同じ大きさです。
血液やリンパに流れていますが、がん細胞は大部分が消えます。
免疫機能でがんがやられます。
ごく一部の細胞が定着して再発につながります。
健康な人でも常に小さながん細胞が出来ています。
大きくならないうちにがん抑制遺伝子が働き、大部分のがん細胞を攻撃しますが、再発は一部が定着して起こります。
がんは自分で増殖し、ほっとくと命が危なくなります。
普通の細胞はケガしても治ります。
トカゲの尻尾も切るとまた元の大きさに戻ります。
がんは途中で止まらないで、 どんどん大きくなります。
血流で動いているがんは死滅しますが、胃壁腸壁等壁にへばり付いたがん細胞は増殖します。
細胞はお互い同士連絡し合い良好状態を形成しますが、がん細胞は連絡しあわず増えて上に盛り上がって来ます。
これがポリープです。
さらに盛り上がると腸壁等に穴があき出血します。
治療は今のところ切るのが一番良い方法です。
ポリープの一部はがんで、一部はがんと正常の境目のものです。
大腸がんには内因性と外因性があります。
内因性は生まれつきのもので、外因性は環境によるものです。
ハワイ在住の二世は白人の米国人と同じ大腸がんの発生率になっています。
牛肉を多く食べると大腸がんも増えて来ます。
脂肪摂取量を見ると、日本が50g/米国が160g/です。
食べ物は塩、油分が多い方が美味しいが、がんには罹り易くなります。
味噌汁、納豆は油分が少なく、健康食です。
日本は終戦直後の脂肪摂取量は20g/日でした。
脂肪分が多く、繊維分少ないと大腸がんが増えます。
繊維分少ないと排便量も少なく、直腸に便が溜まり、がんに罹り易くなります。
黒い便は量も少なくがんに成りやすく、黄色の便は量も多くがんに成り難いようです。
煙草については日本人の男性の50%が煙草を吸います。
大腸がん、動脈硬化、心筋梗 塞等色々の病気の10%は煙草が原因と言われます。
何年か吸っていても、止めればその時点で罹る確率は低下します。
煙草を吸わない人の、肺がんで亡くなる人は10万人に150人で、吸う人はもっと多いが、煙草を止めればその時点で色々のがんの発生率も減少しま す。
最も重要なことは、日常生活で楽しい気持ちでいることが大切です。
がん細胞は血液と一緒に身体の中を回っていますが、毎日楽しい気分で生活すると、身体の免疫力が高まり、 がん細胞は消えてゆきます。
外に出て散歩をしたり、友人と話したり、楽しく過ごす事が大切です。
一日二日徹夜しても免疫力は変わりません。
一ヶ月二ヶ月と暗い気持ちで生活すると免疫力は低下し病気に罹り易くなります。
普段、楽しくやると云うことが非常に重要だと思います。
(平成 16 年横浜だより 94 号)