
「裏庭」は
梨木香歩(なしき かほ)さんの書いたファンタジー小説です。
梨木香歩さんには
「西の魔女が死んだ」などの作品があります。またの機会にこの作品をご紹介したいと思います。
主人公の少女は照美(てるみ)と言います。
両親はレストランを経営している共働きで忙しく彼女をなかなか構ってくれないのですね。「団らん」というものにおおよそ縁遠い家族なんです。
そんな照美の唯一の救いが友達の祖父の丈二でした。
丈二は町内でも有名な
丘のふもとに建つ西洋館のバーンズ屋敷にある裏庭の思い出を話してくれます。
照美自身も幼い時には知的障害の双子の弟・純とともに遊びに行ったりした馴染みの裏庭でした。
弟の純は6年前に肺炎で、あっけなく亡くなっていました。
裏庭で照美はある日とても不思議な体験をすることになります。
まるで「不思議の国のアリス」のように、謎の少女を追いかけた現実世界の「照美」は、「テルミィ」となって異界へと足を踏み入れることになります。
テルミィが迷い込んだ異界は崩壊寸前でした。
崩壊を阻止するためにはバラバラになった竜の骨を元に戻さなければならないのです。
旅の途中で出逢う様々な旅の仲間たち。その過程の描写は楽しいどころか、重くてつらいものでした。
テルミィは常に自分は一体どうしたら良いのか、誰ともなしに質問を投げかけるのですが、それは自分に対する自信の無さの表れに過ぎませんでした。
唯一の旅のナビゲーターであるスナッフさえも殺してしまいます。
傷つき悩みながらものを竜の骨を探し求める旅を続けます。
その辛いシビアな旅の過程で
だんだんと自分という存在について理解してゆくんです。
「私は、もう、だれの役にも立たなくていいんだ」って事を理解した照美は大きな成長を遂げていました。
一体に子供って両親に気に入られようと必死に自分を抑圧することがあるではないでしょうか?
特に照美は、自分の不注意のせいで双子の弟の純が死んだと
自分で自分を責めたり、
必要以上に親に気に入られたくてかなり無理をしていました。
その無理な態度が
今までは照美をがんじがらめにして動けなくしていたのです。
しかしその抑圧を打ち破り、家族と真正面から向き合えるようになった照美は大きく成長しています。
「裏庭」とは
死の世界でもあり同時に照美の
心の闇であったように思います。
照美がテルミィとなって異世界に足を踏み入れる行動は
成長のためには、どうしても必要だったのだと思いますよ。