江戸川乱歩の「目羅博士」 | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います


江戸川乱歩の「目羅博士」は

角川ホラー文庫の「暗黒星」に収録されている作品です。


簡単なあらすじです。

小説家の「私」こと江戸川乱歩は探偵小説の筋を考えるため、閉園間際の上野動物園をぶらついていたのです。
猿山の前で「私」は一人のルンペン風の青年、今風に言えばホームレスのような青年と出会います。
青年の話に引き込まれた「私」は、月光に照らされた不忍池の畔で、ある奇怪な犯罪の話を聞かされることになるのでした。


都会の真ん中、丸の内のビルに青年は以前門番として住み込みで働いていました。

そのビルでは首吊り自殺事件が立て続けに起こっていました。しかも自殺した人たちには自殺の動機が見当たらず、衝動的な自殺としか思えませんでした。

自殺に一役買っていたのが
タイトルになっている
目羅(めら)博士なんですね。


猿真似という言葉があるとおり、猿には人間の動作を模倣する習性がありますね。

人間にもまた同じ習性があるんですよ。
それと鏡を結びつけた末に首吊り自殺が生じます。

目羅博士は、自殺させようとする人物の着ているのと寸分違わないスーツを用意してマネキンに着せておきます。

そしてマネキンを鏡に映していろんな格好をさせた挙げ句に首吊り自殺を決行するんです。


乱歩らしい発想だなあと思いました。


鏡に映したかのようにそっくりな構造をした向かい合わせのビルがあったからこそこの犯行は成り立ったと思いました。


向かい合わせのビルの間には束の間差し込む月光の魔力が有りました。

この犯行は、いわば偶然の産物なのですね。

この話の時代風景は、関東大震災前となってはいますが、現代の東京にも、探せばこのような、まるで合わせ鏡のような風景があるのかもしれませんね。


私達が日常なにげなく見ている風景、昼間は気づかない場所も月光の妖術によって

摩訶不思議な異界ヘの扉が開くのかもしれませんね。