第28室 奇妙な住人 | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います

わたしは「恐怖博物館」の学芸員(キュレーター)をつとめるみらあじゅです。  

ようこそ当恐怖博物館においでくださいました。 
 

私の創作した恐怖話がたくさんこの博物館には収められておりますよ。


本日は

第28室

奇妙な住人です。


私が両親と暮らしていたのは
10階建ての賃貸の市営住宅でした。その9階の一室に
数年前に引っ越して来たのですが、当初から気になっていることがあったのです。

それは明け方の4時くらいになると聞こえて来る音でした。
まるで柱に釘を打ち付けるようなトントンという音です。どうもとなりの部屋からのようでした。

更に上の階からは子供がバタバタと走りまわる音が深夜に響き渡ります。

有る晩のことです。

ついに私の父親がクレームを上の階の住人に入れに行きました。

しかし上の階の住人は70代の老人でした。
一人暮らしだし深夜には寝ている。

孫は居ないので子供が当然訪ねて来ることは無い。

ついでに釘を打ち付けるような音が聞えても、私達一家の隣は空き部屋なのだとも聞かされました。

父親は唖然としてしまったそうです。

すると話の途中で早速上の階より子供の走る足音がしだしたのです。

しかし考えてみると
一人暮らしの老人が住んでいるのは最上階です。

そのうえは屋上になっていて
カギ🔑は管理事務所にあります。
市営住宅の住人も外部から来た人も屋上には行けないのです。

混乱したまま父親は自室に戻ってきました。
相変わらず毎日釘を打ち付ける音と子供の足音は聞こえていました。

しばらくして私は進学のために一時期別の場所で一人暮らしをしました。

卒業後、就職のために再び実家のこの市営住宅に戻ってきました。

本当は一人暮らししたかったのですが、新卒者で一人暮らし出来るようなお給料ではなかったのです。

子供の騒音は相変わらずだったので今度は私がうえの階に行きました。

両親は余り関わり合いになりたくなかったのです。

すると、見慣れない住人に変わっていました。

その新しい見慣れない住人は
半年前に越して来たそうで前の住人のことや騒音のこと、詳しくは知りません。

そこで住宅の管理事務所に尋ねたところ前の住人の老人は


私が進学の為にこちらを離れてから1カ月後にいきなり亡くなってしまったそうです。

今宵もほら、聞こえて来ませんか?

バタバタバタバタ。

そして

夜明けには

トントントントン。