江戸川乱歩の「人間豹」読了 | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います


はじめにふと思ったのだが

江戸川乱歩の「人間豹」というタイトル
どうして「豹人間」にしなかったのだろうかと不思議に思う。

講談社文庫を買って
表紙は
天野喜考氏の装幀だが

他の版だと、あまりにもグロテスクや
エロティックで写真アップが躊躇われるほどだ。

人間豹とされる恩田という人間は
人間と豹との中間みたいな人物である。

本文から引用するならば
『どす黒い顔をして、巨大な両眼が妖しく光る。
グワッと開く大きな口を持っている。
唇は赤くて、絶えずヌメヌメと濡れている。
舌は人間の舌とも思えず、真っ赤な肉の表面に針を植えたような一面のささくれがある。』

そんな人物だ。ご想像出来るだろうか?

 
人間豹・恩田が、カフェの女給の弘子や
劇場の人気女優の江川蘭子を口説いた上に惨殺するという凶行に出るのだ。
女給の弘子や女優江川蘭子の恋人であった神谷という男の依頼で、名探偵明智小五郎が登場となる。

中盤からは恩田と明智の対決という形になる。
 
明智小五郎の奥方は、文代さん。
別の事件「吸血鬼」の後で、助手を経て結婚した人だ。
恩田が3人目の犠牲者として狙うのが文代さんだ。
弘子や蘭子に面影が似ていて、恩田の好みのタイプだからだ。

文代さんは、恩田の策略で、捕らえられた上に
熊🐻の着ぐるみに閉じ込められたり、本物の豹に襲われたり、今回は危ない目に遭うのだ。

いつもなら

「明智先生バンザイ」という助手の小林少年のお約束だが、スッキリしない終わり方をする。

恩田が確実に捕まった訳ではなくて

いつまた世の中を震撼とさせる事件が起きるとも限らないからだ。

恩田は一応は

恩田の父親である人間の男と

雌の豹との間に生まれた子どもという設定だ。

しかし

人間と肉食動物との間に子どもなんて

いささか無理があるのではないだろうか?