画像はネットよりお借りした
西洋建築です。
家霊 ① みらあじゅ作
※岡本かの子の小説にも同名のタイトルのものがありますが、この小説は岡本かの子のものとは無関係です。
私の名前はフロイデです。
※フロイデはドイツ語で喜びの意味ですね(笑)
私は子どものときには
とても貧しくて
母と一緒に
下町の路地裏の小さな長屋に住んでいました。
それが今では
おばあさまと一緒に
由緒あるお屋敷に住む身分となりました。
どうしてこのようなことになったかをお話しましょう。
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ある日の事
私が学校から帰って来ると
内職の編み物の手を休めて
涙ぐんでいる母の姿がありました。
どうしたのか心配している
私に
母は黙って一通の手紙を差し出しました。
差出し人は
一度も会った事のないおばあさまでした。
おばあさまは
大きなお屋敷に住んでいる
大変なお金持ちです。
おじいさまをずっと前に亡くされてから
執事さんや
わずかなメイドさんと
お屋敷に住んでいらっしゃいました。
しかしこのほど
明るい南の国に引っ越す予定を立てて
このお屋敷を引き払うことになりました。
その為に親戚一同と最後に会いたいから
来て欲しいとありました。
招待されているのは私だけで
母の名前がなかったことから
どんなに
おばあさまが
母の事を嫌っているかがわかりました。
おばあさまは
一人息子さんを大変愛していて
やはりお金持ちのお嬢様との結婚を望んでいました。
しかし
一人息子さんは
親がいなくて
貧しく
ろくに学校にも行っていなかった
娘と駆け落ちしたのです。
それが私の母でした。
そうですね、おばあさまの最愛の息子さんとは私の父の事でした。
おばあさまは激怒して、私の父を勘当してしまったのです。
そして
孫の私が生まれても
勘当を解くことはありませんでした。
父は余り身体が丈夫ではなかったのに
母と私の為に
身を粉にして働きました。
そして、ふとした病が元で
天に召されていました。
(➁に続きます。)