
ウンター・デン・リンデンの薔薇
とは、女流ミステリー作家栗本薫さんの
「六道ケ辻シリーズ」の第2作目に当たります。
本当は時系列に沿って読む方が良いのでしょうが
最初に第2作目を読んでしまいました。
「六道ケ辻シリーズ」は、これからおいおい読んで行ってブログでご紹介したいと思っています。このシリーズは呪われた旧家の大導寺が滅亡する様子を描いたものです。
大導寺家には、大正時代に女学生だった笙子という女性が確かに存在していたのです。
存在していたにも関わらず、大導寺家の家系図からはその存在自体が抹消されていました。
青渓女学院は、大正時代には良家の子女の集まる教育機関として存在していました。
廃校になったので取り壊し作業が進む中、2体の白骨死体が見つかります。
また大導寺家の虫干し作業の時に、笙子の交換日記が見つかります。
それによって、笙子の禁断の愛と
封印されていた大導寺家の惨劇が明るみに出ます。
笙子は小柄で弱々しい女生徒でした。
それに対して摩由璃という少女は男装の麗人という言葉がぴったりの生徒でした。
笙子は摩由璃とはレズビアンのような関係になります。この頃はレズビアン、同性愛をエスと呼んでいたと作中には書かれています。
摩由璃は、おとなしくて弱々しい笙子がクラスメートからひどくいじめられて髪の毛を切られてしまったことや
自分自身が学園祭でハムレットを演じた時に、意地悪な少女から、劇用の小道具の剣と本物の剣をすり替えられて怪我した事をどうしても許せませんでした。
いじめを行なった少女たちを言葉の暗示にかけて、死に追いやったのは、摩由璃でした。
白骨死体は、心中した笙子と摩由璃のものでした。
彼女たちは森鴎外の「舞姫」の中で
森鴎外とエリスが出会った
ウンター・デン・リンデン目指して
死出の旅路をたどったのでした。
『少女は全て、美しい時に死ぬべきだし、美しくない少女は存在してはならぬのだからそれこそすみやかに消滅すべきであるのだ』
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全てはこの文章に凝縮されている気がしました。
同性同士の禁断の愛故に
大導寺一族の家系図からは抹消されたのでしょうとの
大導寺一族の呪いを垣間見る作品でした。