本当の事しか言えない
みらあじゅの創作童話
昔、むかーしあるところに
嘘をついては
人間関係をめちゃくちゃにひっかき回すという
それはもう
とても性格の捻じくれた
意地悪おばさんがおりました。
おばさんにとっては
「他人の不幸は蜜の味」でしたから
根も葉もない嘘で他人が不幸になるのが何よりも快感だったのです。
おばさんの嘘のせいで
友達も恋人も全て失ってしまった女の子。
女の子は必死に天の神様に向かって、嘘つきおばさんに罰を与えてくれるようにお百度参りでお願いしました。
そのお願いを聞き届けて下さったのは天の神様だったでしょうか?
いえいえ。
地獄の怖い閻魔大王様でした。
手下の鬼にさらわれて閻魔大王様の前に引き出されたおばさんでしたが
何しろこの人は、相当根性がひん曲がっていますから、
閻魔大王様の前でも
いけしゃあしゃあと
「私は一度も嘘はついた事はございません」と言い放つ始末です。
閻魔大王様は呆れ果てて
「お前のようなものは地獄でさえお断りじゃ。この世に戻してやる。
その代わりに1つ罰を与えてやるからそのつもりでいろ」と言い放ち、おばさんをこの世に戻しました。
嘘つきおばさんは笑いが止まりません。
「アハハ。な〜んだ。閻魔大王様たって全然たいしたことないじゃないかい。どんな罰なんだい、あ~楽しみだこと。」
おばさんが笑っていられたのはそれまででした。
おばさんはいきなり見ず知らずの女性に
「なあにい、センスのないブス」と暴言を吐いてキレられました。
そうなんです。おばさんは罰として
心に思った本当のことしか言えなくなってしまったのでした。
その次には、はげ頭の町内会長さんには
「アーら。みっともないやかん頭」
と言って穏やかな町内会長さんでさえ怒らせてしまい、町内からは総スカンとなりましたよ。
極めつけはあるお寺で幽霊画を見た時でした。
「変な幽霊。迫力ないじゃない。全然怖くないよ、あっはっは」
すっかり怒った幽霊は
「なんだって、じゃあ恐ろしさ思いしれ」
幽霊はおばさんを、むんずとわしづかみにすると、夜の闇に消えて行きました。
その日以降おばさんの姿を見た人は誰もいません。
おしまい