バクの悲しみ
みらあじゅの創作童話
今日のように、雨の夜には
お月さまはお休みしていますので
ひとりでのんびりと
お空のお散歩を楽しんでいます。
おやおや、誰かがしくしくと泣いていますよ。
「誰ですか、泣いているのは?」
お月さまがあたりを見渡すと
木にもたれて
1ぴきのバクが泣いていました。
お月さまが泣いているわけを
バクに尋ねると
バクはわっとお月さまにすがりついてきました。
「お月さまあ。僕のお仕事は人の悪い夢を食べることなのですが、もう嫌になりました。
夢が悪ければ悪いほどおいしくて、おなかが空いているときに、つい人が悪い夢を見てしまうようにとお祈りしてしまう。そんな自分が嫌になりました。」
お月さまはしばらく考えてこう言いました。
「バクさん、そんなふうにご自分を責めるのはおよしなさい。
あなたは素晴らしいのですよ。
誰だっておなかは空きます。
だけどね、悪い夢を食べて人を安眠させることは誰にでも出来ることではありませんよ。」
「そうですか。」
バクはパアッと顔を明るくして、悪い夢を探しにゆきました。
そうです。
他人に悪い夢を見させて嫌な気持ちにさせる人よりも
バクは、ずっとずっと素晴らしい事をしているのですね。
おしまい