わたしは「恐怖博物館」の学芸員(キュレーター)をつとめるみらあじゅです。
ようこそ当恐怖博物館においでくださいました。
その当時僕は東京近郊のある市に住んでいて、学校の帰りには、いつも駅前のショッピングセンターにたむろしていました。
その日も数人の仲間と、ショッピングセンターの3Fと4Fを結んでいる階段の踊り場に座り込み、だべっていました。
明君が突然立ち上がり
「ちょっとトイレに行くよ」と言い
4Fの男子トイレに行きました。
残りの仲間はそれを大して気にも留めていなかったのですが1時間くらい経っても、明君は戻ってきません。
気になった隆君が様子を見に行きました。
しばらくして不思議そうな顔の隆君が戻って来ると
「変だよ、トイレにこんなものが落ちてた」と言って、ガラケーをみんなに見せたではありませんか。
そのころはまたスマホが普及する前で、ガラケーの時代だったのです。
「えっ、これは明君のものじゃないか。どこにあったんだよ?」
「それが、トイレの中だったんだ」
隆君は4Fの男子用トイレの個室に入ったそうです。
ドアを開けると、床にガラケーが落ちていたので拾い上げ、
「なんだよ、これは。明のものだ」
そう口にしたとたん
隆君の目の前には
真っ暗な闇が広がり、クラクラと目眩がした隆君は、気がついたときにはトイレの個室に倒れていて、慌ててトイレから出たそうです。
とうとう明君は姿を表すことがなくて、家族より警察には捜索願が出されました。
高校を卒業して数年間経ちましたが
居間でも明君は行方不明のままです。