ようこそ当恐怖博物館においでくださいました。
私の創作した恐怖話がたくさん
この博物館には収められておりますよ。
今日は
「雨の日の陽炎の正体は?」です。
今日も雨なので、雨にまつわる怪談書いてみました。
僕は健康そのものです。
病院とは無縁の日々を過ごしています。
しかし、僕自身の病気ではないのですが、母が入院してしまい、久しぶりに病院に通う日々になりました。
母が世話になっている総合病院は老朽化が著しく、二年後には取り壊しが決まっていると聞いています。
そのせいか、構内外を問わず、あらゆる場所が薄汚れたまま放置されているのです。
職員にもやる気が感じられず、居るだけで気が滅入ってくるような場所でした。
その日も朝から雨が降り続いていました。
病院に向かった僕は、いつものように駐輪場を抜け、玄関に向かおうとしました。
ふとその時に妙なものを見つけて立ち止まったのです。
駐輪場に陽炎があるのです。
屋根の下に立つ陽炎など見たことがありません。そもそもが雨の日にですよ。
しかし、それは陽炎としかいえないものでした。
じっと見つめるうち、僕は妙なことに気づきました。
もやもやとした揺らめきが移動しているのです。
決して速い動きではありません。よく見ていないと分からない程度の動きなんです。
しばらく歩いてから振り向くと、陽炎はまだそこに有りました。
それからは僕は気になって気をつけて見るようにしていました。
奇妙なことに陽炎が現れるのは決まって雨の日でした。
何か起こるわけでもなく、ただじわじわと動き回るだけなんです。
怖いというより、何だか不吉な予感でしたね。
7月に入ってから晴天の日が続き、いつしか僕の心の中からは陽炎の存在は消えかけていました。
しかしです。
母親の退院を一週間後に控えた日のこと。
久しぶりに朝からの雨でした。病院の近くまで来て、僕は不意に陽炎のことを思いだしたのです。。
目を凝らすまでもありませんでした。相変わらず陽炎は律儀に立っているではありませんか。
何らかの自然現象かもしれないな、自分自身を納得させて僕は玄関前で傘を畳みました。
するとその時でした。
タクシーが玄関に横付けされて、親子連れが降りてきたのです。
険しい顔つきの母親が、三歳ぐらいの女の子を抱いていました。女の子は肩で息をしており、見るからに具合いが悪そうでした。
先を譲ろうと僕が退くと
目の前で、あの陽炎が動いたのです。
今までのゆっくり中動きは何処へやら、陽炎は瞬間移動としか思えない速さで母親に近づき子供を丸ごと包みこみました。
その途端女の子の呼吸が止まったのです。
母親の悲痛な叫びに気づいた看護師が駆け寄ってきました。病院の中に搬送される寸前まで、陽炎女の子を包み込んでいたのですよ。
翌々日も雨でした。やはり、陽炎はいました。
僕は急に恐ろしくなり、病院の裏口に回ろうとしました。ゆっくりと動く陽炎を横目に見ながら、急ぎ足で裏口へ向かいました。
途中、親子連れとすれ違いました。母親が我が子に話しかけていました。
「しんちゃん、大丈夫よ。お熱、早く治してファミレスに行こうね」
子供は辛うじて返事できるぐらい弱っていました。
このまま進むと陽炎に捕まってしまうのではないでしょうか?。どうにかして引き留めなくては。
と僕が焦ったときでした。
振り返った僕のの目の前に陽炎がいたのです。
陽炎はあっという間に男の子を包みこみました。
子供は上を向き、母親に何か言おうとしたまま息が絶えてしまいました。