「あの子の母親は狂って私の大事な一人息子を刺し殺した挙げ句、家に火を放った狂った女なのよ。
そんな悪い女が残した夢路を孫として大切にするわけがないでしょう」
嘘だ、嘘だと言って。
私はそれからのことは夢うつつにしか覚えていない。
フラフラと家を出て、断崖のあたりを彷徨っていた。
町に灯りが灯る頃にお祖母様と主治医に見つけられてしまった。
「夢路、そんなところにいないでこちらにおいで」
嘘を含みきったお祖母様の作り笑い。
いや、もう騙されるもんですか。
その時、くらい夜空に光の帆船が見えた気がした。
みんな楽しげに私に向かって手を振っている。
「おいで、おいでよ。ロボトミーなんて受ける必要ないよ。」
船、手を伸ばせは届きそうな気がした。
私は躊躇うことなく断崖から身を踊らせた。
The End