ホタテ🐚貝の加工工場に転職した留吉は寮に入った。
同僚の与作とは仲の良い友達になり、あの恐怖の1夜は次第に留吉の記憶から薄れていき、このまま平穏無事な生活になるかと思われた。
そう、与作のアパートに招かれるまでは。
「なあ。おらのアパートに遊びに来るべ。」
与作から誘われた留吉は喜んで招きに応じた。そして話が弾み、与作のアパートに泊まることにした。
その深夜のことである。
路面電車が窓の外を走る轟音で目覚めた留吉は、与作を揺さぶり起こした。
「与作サ。ほらほら路面電車だッペ。」
揺さぶり起こされた与作の顔色がみるみる青ざめた。
こんな深夜に路面電車など走っている筈がない。
そもそも、この町には路面電車などはじめから存在しないのだ。
「あれは、何だべ?」
顔面蒼白で恐る恐る窓から外を眺めた2人の少年の目に飛び込んで来たのは。
銀色の燐光を放ち、天井にフワフワと人魂を漂わせた路面電車だった。
しかも、乗客の顔が不思議なことにすべて見えた。
全員が経帷子を着て、頭には白い三角の布を付けていた。
※作中の路面電車などの画像はネットからお借りしたことを失礼いたします。
また、この作品を書くに当たり、過去に路面電車が走っていた町について調査しました。
舞台となる青森には、路面電車は走っておりませんでした。
実際には走っている筈がない路面電車を描きたかった次第です。
失礼しました。
みらあじゅ