帚木 蓬生 「薔薇窓」 | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います


帚木蓬生(ハハキギ ホウセイ)さんは
福岡県小郡市生まれの医師&作家です。
ペンネームは源氏物語の第54帳からだそうですよ。
ホウキ、掃除する🧹と変換すると出て来るのですが、私は最初どういうすれば漢字変換できるか悩んでしまいましたよ(◡ ω ◡)



この薔薇窓という作品は、今では「薔薇窓の闇」と改名されていますが、私は古本で、改名前のものを読みました。今は、上下に分かれて文庫版になっているようです。

舞台は20世紀始めパリ万博が開催中のフランスの首都パリです。

精神科医のラゼーグ医師の元に、正体不明の少女の患者が運びこまれます。何か大変なショックを受けている様子でしかも外国人なので言葉が通じません。
最初は精神病院に入院させられた少女でしたが、次第にフランス語も話せるようになって意思の疎通ができるようになります。

少女は音奴という日本人の軽業師の少女でした。貧しさのために軽業一座に売られ、パリ万博の巡業のために渡仏し、またもや人買いに売られとても恐ろしい目にあってそのショックで1時期に精神に異常をきたしていたのでした。

当時パリでは不可解な女性失踪事件が連続して起きていました。
その事件は音奴が人買いに買われたことと結びついていました。

二十世紀初頭では、まだまだ精神的な病に対しては現代のような治療法ではなかったのだなあと痛感しました。 

日本人の十代の少女音奴が、知らない異国の地で健気に生きていく姿には心が揺さぶられました。

ラストはラゼーグ医師とのハッピーエンドですが、ラーセグ医師がこの健気な少女を愛するようになった理由が解る気がしました。

恋愛小説ではなくてサスペンス仕立てでは有りますが、バレンタインに読んでみて良かったと思えた1冊の本でした。