ラルゴ館奇譚Ⅷ ムーンライト・シャドウ | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います


それは、鎌のように細い三日月が、空の中ほどで
アンモナイトの夢を見ているような夜のことだった。 
仕事の帰りにキネマに寄ってラルゴ館に帰って来た私は、黒いゆらゆらした影のようなモノが、幾つもの段ボールを抱えて、私の真下の部屋に消えて行くのを見た。

「このアパートには夜に引っ越して来るモノがいるのかな?」

ラルゴ館で暮らすようになってから、不思議なことが起こるということにだんだん慣れて来つつある私だった。

翌朝、自分の部屋のドアを開いた私は、思わぬモノがそこに置いてあるのに首をひねってしまった。


アンティーク調のガラス瓶と、金釘流の手紙が置いてあったのだった。

「昨夜は夜分に引っ越し失礼しました。真下の部屋の新しい住人より。よろしければ、このガラス瓶に水を入れて、満月の晩に1番窓辺に置いて下さいませんか

どういうことかと思いながら、次の満月の夜🌕に、私は手紙に書かれた通りに窓辺に置いてみた。




瓶の中の水は

驚いたことに


シャンパンに変わっていたのだった。

ムーンライトマジック

満月の夜の不思議