仮面の告白 創作小説 | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います

まずはじめに、作者より。この創作小説はタイトルだけは三島由紀夫と一緒だが、内容的には何の関係もないことを告白しておこう。
みらあじゅ


僕の父さんが亡くなって間もなく、
母さんが連れて来たのは、仮面を被った男だった。

僕の母さんは、美しいものが大好きだったのに、本当の父さんは残念ながら、あまり男前とは言えなかったのだ。

家の暗い応接間で、母さんと新しい父さん、そして僕の奇妙な生活が始まった。

母さんが新しい父さんの仮面に向かって話す。
「ねえ、貴方」
仮面の父さんが返事をする。
「ああ、お前」

父さんは僕にも話かける。
「なぁ、キリオくん」

その言葉は、どことなくよそよそしい。
嘘くさい。


そんなある日、僕は学校の先生から呼ばれた。
両親の乗った自動車が事故にあったらしい。


僕は、モルグで、モノ言わぬ両親と対面した。

母の死に顔は美しいものだった。
傷1つなかった。

父は、仮面が顔に張り付いてどうしても取ることができずにいた。

故に僕は、新しい父さんの素顔を知らずじまいだった。

(FIN)