みらあじゅ
僕の父さんが亡くなって間もなく、
母さんが連れて来たのは、仮面を被った男だった。
家の暗い応接間で、母さんと新しい父さん、そして僕の奇妙な生活が始まった。
母さんが新しい父さんの仮面に向かって話す。
「ねえ、貴方」
仮面の父さんが返事をする。
「ああ、お前」
父さんは僕にも話かける。
「なぁ、キリオくん」
その言葉は、どことなくよそよそしい。
嘘くさい。
そんなある日、僕は学校の先生から呼ばれた。
両親の乗った自動車が事故にあったらしい。
僕は、モルグで、モノ言わぬ両親と対面した。
母の死に顔は美しいものだった。
傷1つなかった。
父は、仮面が顔に張り付いてどうしても取ることができずにいた。
故に僕は、新しい父さんの素顔を知らずじまいだった。
(FIN)