昼の月と夜の太陽の邂逅 | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います

ラルゴ館奇譚⑤

ユール(冬至)祭の前夜に、投稿しようとしていた原稿が仕上がった。

今夜のうちに投函してしまおうと思い、厚手のコートを羽織ってラルゴ館の外に出る。

「お嬢さん、こんな夜中に何処にいくの?こんな晩には不思議なことが起きるよ。」

暗闇の中から何者かの声がするので、私も
「ちょっとそこのポストまでね」と返事をして歩きはじめる。
何者かの忍び笑いが聞こえる。

「すぐ帰れるといいんだけどね」

ラルゴ館から2ブロック先のポストに原稿を投稿すると私は帰りはじめたが、ラルゴ館の隣の公園が気になって仕方がなかった。

こんな夜中に楽しげな気配がする。

東屋に誰かいるようだ。

私はスウ〜と大きな息を吐くと決心して話かけた。

「誰ですか。そこにいるのは?」

ややあって陽気な2人の男性の笑い声が響いた。

「運の良いお嬢さんだ。今夜は真昼の月と夜の太陽が千年ぶりに邂逅して、約束の盃を交わす夜だよ。」

私は真昼の月と夜の太陽に招かれて、とっときのシャンパンをご馳走になって、ラルゴ館にかえって来た。

暗闇からさっきの声がまたした。
「早いお帰りで。」

くすくす。くすくす。

私は一体誰と話たのだろう。




冬至祭の前夜の摩訶不思議な話。