ユール(冬至)祭の前夜に、投稿しようとしていた原稿が仕上がった。
今夜のうちに投函してしまおうと思い、厚手のコートを羽織ってラルゴ館の外に出る。
「お嬢さん、こんな夜中に何処にいくの?こんな晩には不思議なことが起きるよ。」
暗闇の中から何者かの声がするので、私も
「ちょっとそこのポストまでね」と返事をして歩きはじめる。
何者かの忍び笑いが聞こえる。
「すぐ帰れるといいんだけどね」
ラルゴ館から2ブロック先のポストに原稿を投稿すると私は帰りはじめたが、ラルゴ館の隣の公園が気になって仕方がなかった。
こんな夜中に楽しげな気配がする。
東屋に誰かいるようだ。
私はスウ〜と大きな息を吐くと決心して話かけた。
「誰ですか。そこにいるのは?」
ややあって陽気な2人の男性の笑い声が響いた。
「運の良いお嬢さんだ。今夜は真昼の月と夜の太陽が千年ぶりに邂逅して、約束の盃を交わす夜だよ。」
私は真昼の月と夜の太陽に招かれて、とっときのシャンパンをご馳走になって、ラルゴ館にかえって来た。
暗闇からさっきの声がまたした。
「早いお帰りで。」
くすくす。くすくす。
私は一体誰と話たのだろう。
冬至祭の前夜の摩訶不思議な話。