メアリー・ライリーという小説は
ヴァレリー・マーティンに因って描かれました。
映画化もされて、ジキル博士とハイド氏の一人二役をジョン・マルコヴィッチがこなし、ジキル博士の屋敷に勤めるメイドのメアリー・ライリーをジュリア・ロバーツがこなしていますよ。

メアリーというメイドの立場からみたジキルとハイドの物語なので、元々の小説からすればかなり異色な作品だと思いますよ。
ジキル博士邸に住み込みのメイドとして働く若い女性のメアリーは、手首や首筋のひどい傷跡をジキル博士に見られてしまいます。
実はメアリーは子供の時には、飲んだくれの父親からひどい虐待を受けていました。物置に監禁されて、大嫌いな鼠を放り込まれて噛まれたのがその傷跡でした。見かねた母に、飲んだくれの父親から離すためにメイド奉公に出されていたメアリーが何軒めかに奉公することになったのがジキル博士の屋敷でした。
ジキル博士はメアリーをいたわり、メアリーもまた優しく紳士的な博士に惹かれていきます。
しかし幸せな日々にも、ジキル博士が助手として雇い入れたハイドという乱暴で粗野な青年の出現に因って、次第に不穏な雰囲気が漂い始めます。そして、ついにメアリーはジキルとハイドが同一人物だと知ってしまいます。
ネタバレになりますが、ジキル博士/ハイドもメアリーを愛していて、メアリーを解放して自由にするために自殺してしまうのです。
小説のラストでは、ジキルの亡骸に寄り添うメアリーの姿と「周りからどう思われても、私は愛する人を一人にしない」という固い決意に私は心を揺さぶられました。
きっと私も、もしもメアリーの立場だったら、紳士的で優しくしてくれる博士と、乱暴で粗野なハイド青年の2つの愛の狭間で気持ちが揺れるのでしょうね。
ひさしぶりに読み返すと、気持ちを揺さぶられました。