「ラルゴ館奇譚」③ | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います

みらあじゅセンセの創作です。

私は大抵晴れた日には、すずかけ公園のベンチで一人昼御飯を食べることにしている。

今日はツナサンドに馥郁としたアールグレイ紅茶。仕事の合間の至福の時間だ。

ふと私は視線を感じて、後ろを振り返った。

薄汚れたキジトラ猫の親子がいて、サンドイッチを羨ましそうに眺めていた。

「お腹すいてるの?」
私がツナサンドを放ってやると、まず親猫は子猫に与えてじっと私を見た。

「仕方ないなあ。ほらお食べ。」
私は昼御飯を野良猫親子に与えた。

その晩私が「ラルゴ館」の自分の部屋で寛いでいるところに、遠慮がちにドアが叩かれた。

「はーい。どなたですか?」

返事はなくて、ドアの向こうには薄汚れた紙に包まれて、メッセージカードとけばだった毛糸玉が幾つかはいっていた。

カードには「これでマフラーでもお編みください」と下手くそな字で書かれていた。

私には毛糸など寄越す知り合いはいなかった。

そしてなぜこの送り主は、私が不器用でマフラーくらいしか編めないことを知っているのか訝しいと思ったが。

創作の合間に、虎縞模様のマフラーを1枚完成させた。

なんだか幸せな気分で、ジャム猫ベーカリーにトースト用のパンを買いに出掛ける。

店の陰から、寒そうに震えている小さな子供がいたので、思わずマフラーを外して掛けてやった。

するといつの間にか、薄汚れた縞模様の服の母親が影のように現れてピョコンとお辞儀をして踵を返した。

親子の後ろ姿には、長い縞模様の尻尾が一瞬ゆらゆらしているのが見えたようだったが、気のせいだろうか?