老舗が多い浅草だが、勝海舟とジョン万次郎が連れだっておとずれたという鰻屋がある…{やっこ}という=ただしくは、やっ古と書くようだ。
夏目漱石の小説「虞美人草」や岡本綺堂{半七捕物帖}などの文中にも登場するが、国際通りから吾妻橋に向かう雷門通りのアーケードを歩くと左側にある。
老舗の雰囲気ただよう立派な店だが、気さくな女将が出迎えてくれた。
店内は、昭和レトロというよりは、わたしには子供のころの記憶にある、明治・大正の頃の懐かしい雰囲気だった。
創業は寛政年間というから、十一代将軍徳川家斉の頃だ…ゆうに200年をこえるから、老舗中の老舗である。
家斉が将軍に就任したのは、天明7年=1787年…一方、鰻の蒲焼きは上野大和屋が元祖と、天明年間の古文書にあるそうだ。いや元禄だという説もあるが。
江戸の蒲焼きは、背中から割いて、焼いて、蒸して、タレを付けながら、また炭で焼くのが、流儀のようだ。
もちろん、やっこの鰻も、この江戸流だが、焦げがない丁寧な焼きかげんは、一流店の中でもトップクラス、腕の良い職人の、丁寧な仕事かげんが判ろうというものだ。
かなり蒸したと思われる柔らかさ、比較的あっさり味のタレ、鰻とのバランスを考えたようなメシの炊き具合、老舗ならではの鰻重である。
鰻の量で何種類かある鰻重の中で、私が注文した桜は4320円。下の梅よりも心持ち大きめのお重なのか、周りに白いゴ飯が見えるが、これは私の好みからは外れる…気分的には、ゴ飯が見えないのが好きなので。
元来江戸っ子は見栄っぱりだから「隣よりオレの重箱のほうが大きいゾ」で満足するのか、私のように見栄をはるなんざ江戸っ子の風かみにもおけね~っというのと、どちらが本物の江戸っ子なのだろうか。
写真:桐6850円
鰻ずきの親友松下さんが、桐6850円を食べた…重箱はさらに横長で、鰻が二匹並んでいる。ちょっと食べたくなる気分だが、その前にフトコロと相談しなければ…3年ほど前だから、更に値上がりしているかもしれないが。
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