豚足麺を食べに行ったのは2013年だった…なにかの本で池波正太郎の「ここの豚足麺はウマイ」という記事を読んだので…もちろん何を食べても旨い広東料理店だったが。

 店の名は徳記=トッキ…関帝廟通りからの露地奥にひっそりとある小さな店。街の中心から外れているせいか、有名なのに行列なしが嬉しかった…露地の入口は日本の新聞発祥之地だと聞く。

写真:狭い露地と徳記/正面新聞発祥之地らしい

 豚足麺をホめたのは池波正太郎だけじゃない。永六輔、伊丹十三、渡辺文雄なども絶賛…赤塚不二夫、佐野史郎などの色紙もたくさん/2013年。

写真:他にも文人・芸能人の色紙沢山

 豚足麺…正しくは豚骨清湯醬油麺と呼ぶらしい…澄んだスープにキレイに並んだ自家製麺は、箸をつけるには惜しい眺めだが、思い切って食べれば、思いの外あっさりとした醬油味。

 別皿の豚足二個にかぶりつく必要はない…独特な味つけでトロトロになるまで煮込まれて、箸で楽に千切れるコラーゲンの塊だった。

 先ず麺を味わいながら、豚足をムシャムシャというよりは、八角のホノカな香りとともに口にはこべば、溶けていくような柔らかさの食感が病みつきになる…「全部食べたら、残ったツユを半分ほどに減った麺の丼にあけると味が変って・・」二度楽しめるというのが池波流食べかただが、私は一個食べて残った一個とツユを一緒に移して食べる。

 具がないスッポリ麺は、なにか物足りなく寂しい気がするからだ。

 さて、ココの女主人は評判が悪い…ブッキラボーな応対から、おっかないオバサンと、呼ばれるようになったらしい…が、私は違う。初訪問の時から笑顔で話しかけられて世間話、気さくなオバサンだったから。

 が、コロナ禍襲来で多くの店が閉店し、徳記も閉店との噂が聞こえてきた。が、ふと見たネットに再会したと…が、名物オバサンは引退して、娘さんにバトンタッチだという。

 ネットを検索すると、食べログ百名店になっていた…私は食べログ評価をあまり信用してないが、百名店だけは目安になる。

 人畜無害の年寄りになると、娘は大好き(変態ではないゾ)…こいつは行かなきゃと心に決めたが、問題の豚足麺の味が、昔と変わらないので安堵した。

写真:奥の窓際席から店内と名物オバサン/昔の写真。

 モひとつ…初訪問のとき笑顔でオバサンが案内してくれたのは、入口から右一番奥の窓側の席…あとになり其処が池波正太郎の定席だったと知り、偶然とはいえ何か嬉しくなった…オバサンの気配りだったのかな?。