わたしの好物の一つに河豚がある…が、大衆的チェーン店の玄品河豚でも高いと思うのに、ちゃんとした店で、とら河豚一式を食べれば、福沢諭吉が二・三枚は飛んでいくから、諦めるよりしかたがない。

 が、地方に行くと、比較的安く食べられるのがありがたい。

 話変わって、好物の河豚となれば、どうしても行ってみたかったのが、下関の春帆楼…例の毒で、秀吉以来の禁食令が、明治21年解禁になり、許可第一号が春帆楼だからだ。

 明治20年、伊藤博文が春帆楼に泊まったが、あいにく海がしけで魚がない…で、オカミは打ち首覚悟で河豚料理を出したという。

 「これは旨い・禁止はおかしい」・で、翌年解禁となったそうだ…そんな、いわく因縁のある店で、旨いと好奇心が両立するんじゃ行かずばなるまい、ということだった。

 

 広島に行く用事があったので、旨い店をと調べたら、ナンと春帆楼があるではないか…しめたと思ったが、一応ようすを、と調べることにした。

 以前「河豚を食べましょう」と言ったマツダ役員に、と思ったがやめた…電話をすれば接待されてしまう、ということでデルタ工業の知人に電話した。

 「広島で春帆楼はないでしょう・広島で河豚ならショウベンタンゴです」…ショウベン?食べ物屋には、ふさわしくない名前だと、調べてみたら、正弁丹吾だった。

 間口が狭く奥が深い建物を、鰻の寝床というが、正弁丹吾は狭い間口で、高く上に伸びた鉄筋コンクリートのビル…この店の鰻は、立って寝るのだろうか、と思った。

 ドアを開けて、一歩なかに入れば、落ち着いた和の雰囲気に満ち、気配りの利いた仲居の案内にはじまり、食事が終わるまで、一切の面倒を、気分よくみてくれた。

 食べ終わり、勘定を払おうと帳場に降りると、品のいい年をとった女将がいて、聞けば私と同じ、昭和8年生まれだった。

 正弁丹吾で、おいしい本格的とら河豚料理を、コースで食べたのは2017年だが、勘定は1万7712円だった…東京なら、倍以上だろう。やはり河豚は地方に限る。

 料理の食レポは、どうも苦手だから、写真を順番に並べておきます。一人前です…横着ご容赦を。

写真:突き出し&てっさ=ふぐ刺し。

写真:ひれ酒&焼き河豚。

写真:白子天麩羅&焼き白子&唐揚げ&てっちり&ふぐ雑炊&デザート。

 どれも、味は最高、満足、満腹でした。