人類初の空の旅は、モンゴルフィエの熱気球…1783年のことだった。

 熱気球は、中身が空気から水素になって、グンと実用性が増すが、まだ風まかせだった。

 で、プロペラと舵を付ければ、行きたいところに、と考えたが、問題はプロペラを回す動力だった。

 人力で漕いだりしたが、実用的ではない…物理的に袋をふくらませれば球体=気球になるが、これも実用的ではない、と流線型にしたのがムスニエ、1784年のことだった。

 翌1785年にブランシャールが、気球に舵をつけて、ドーバーからカレーに飛んだ…世界初の気球による海峡横断だった。

 でも、まだ気球は風まかせ…が、1852年にジファールが、3馬力の蒸気機関を装備して、時速10粁で、好きな方向に飛ぶことに成功した…これが、飛行船の元祖のようだ。

 気球から飛行船へ、この3人は、いずれもフランス人だった。

 1872年に、石炭ガスエンジン3.6馬力を載せて、時速19粁で飛んだヘンライン。1883年に1.5馬力電動機で飛んだティサンディエなどは、いずれも実験的飛行船で、実用になる飛行船は、まだだった。

写真:ヘンライン&ティサンディエ/パリ・ブルージェ航空博物館で。

 ようやく実用的飛行船の登場は1884年…ルナールクレプスのフランス号は、1864㎥のガスを充填して全長50米、8馬力の電動機で時速20粁の飛行に成功した。

写真:フランス号。

 実用的になった飛行船は、急速に発展を続け、その中の代表作が、パリの伊達男サントスデュモンだった。

 立て続けに12隻造ったというから、半端な金持ちではない…その6号機は全長33米・容積622㎥で、懸賞飛行に挑戦した。

 課題は、エッフェル塔を回り、往復22粁を飛行、30分以内に帰還するというもの…見事成功して懸賞金12万フランを手にした…1901年のことだった。

 が「名誉は頂くが,賞金はいらない」と半分をパリの貧しい人たちに、半分をスタッフに分け与えたという。

写真:欧州初飛行に成功したサントスデュモン機/背景はサントスデュモンの飛行船。

 また、飛行船となれば、忘れてはならないのが、ツェッペリン伯爵だ。

 ツェッペリン伯爵は理論派で、1㎥で生まれる浮揚力は1kgだからバカでかくなる…これまでの軟式では駄目、と骨組みを持つ硬式飛行船を完成したのが、1900年だった。

写真:ボーデンゼー湖で飛行に成功したツェッペリン号。

 第一次世界大戦では、はるばるロンドンを空襲、爆弾投下をしている…渡洋爆撃である。。

 その後ツェッペリンのLZシリーズは、日進月歩で進化…1928年には、全長235米・航続距離1万粁になり、1929年、世界一周にチャレンジして、途中、日本にも飛来し、次の目的地、米国に飛び立った。

写真:東京上空を飛行するツェッペリン号。

 世界一周に成功すると、翌1930年には米国へ、大西洋横断定期航路を開設した。

 が、1937年、米国に到着したヒンデンブルグ号が、係留作業中の火災で死者多数…これで、優雅な大西洋横断定期便の幕が閉じられた。

 この原因不明の火災には、米国にも責任があった…台頭するナチを警戒して、ドイツ向けヘリュームガスの輸出を禁止した…で、燃えないヘリューム用で完成していたツェッペリンは、水素用に改修されたのだ。

 いずれにしても、これで、飛行船の商業飛行は終わりを告げた…あとは,小規模な宣伝用などの仕事で、細々と生き延びている。