御膳坊は、六本木交差点のアマンドから、麻布十番方面への芋洗い坂をくだって、少し歩いた先にある。

 子供の頃、麻布十番からの芋洗い坂は、六本木交差点手前50米ほどを、朝日神社方面へ左に曲がりながら上る、坂の名前だったような気がする。

 江戸時代、麻布十番からの道は、直進で六本木には繋がってなかったようだ…芋洗い坂の名は、朝日神社そばに芋を売る店があったからだと聞く。

 御膳坊は、珍しい雲南料理の高級中華で、昭和70年=1995年に創業した…現在、銀座にも支店がある。

 ちなみに、日本では御膳坊以外に、雲南料理に出合った記憶がない…北京や上海、香港ではよく見掛けたが。

 この店の名物は、茸料理。特に火の小鍋は、食べるべき一品だと思う。

 茸は、世界各地から、また雲南省からの、天然物もあるらしい…とにかく、御膳坊の料理は、医食同源という中華の伝統を守る薬膳料理ということだ。

 ここで食べた冷やし中華は、海鮮涼麺というように、海の幸がタップリの冷やし中華である。

 醤油味に黒酢という感じのスープで、新鮮な海の幸を、プリプリと楽しめた。

 2000円前後という値段は、致し方ない。安い通常の冷やしソバもあるらしいが、食べたことがない…いずれにしても、どの料理も、麻布十番の登龍より、少し安めだ。

 

 話変わって、過橋米線という麺がある…コロナ前の新橋に、そのものズバリ、過橋米線という名の店があった。

 過橋米線という湯麺には、いわれがある…昔、中国や朝鮮で、高級官僚への登竜門で、科挙という試験制度があった。

 今の司法試験より難しいようだが、その受験に必死で学ぶ青年がいた。母親が、勉学中の息子に温かいソバをと思ったが、途中の橋を渡る頃には冷えてしまう。

 母は熱々を食べさそうと、冷めない工夫をして生まれたのが、過橋米線だという。

 それはそれとして、その店には、汽鶏鍋という限定料理があり、とても旨かった。

 ある日、ふと見た御膳坊のメニューに、気鍋というのがあって、なるほどと一人うなずいた…新橋の過橋米線は、雲南料理屋だったのだ、と初めて知った。