関東地方もじきに梅雨入り。梅雨が明ければ夏…夏が来れば、冷やし中華だ。

 30年ほど前に、三本和彦に連れて行かれたのが、銀座の羽衣だった。

 挨拶にきた主人と、親しげに話していたが、どうやら彼が新聞社時代からの、付きあいらしい。

 銀座8丁目、食通の池波正太郎御用達の資生堂パーラーから、歩いて、じきに昭和通りという左に羽衣がある…そこは銀座7丁目だ。

 歴史を感じる、石積みの門から、急な細い階段で下に降りると、時代を感じる店内は、高級感のある昭和レトロという感じにあふれている。

 こじんまりとした入り口、狭い階段からは、予想外な広々とした店内だ。

 この店も、池波正太郎御用達らしいが、評判の冷やし中華を、羽衣では河南涼麺と呼ぶ。

 ここの涼麺は変わっている…先ずツユ入りの丼から、麺をツユそばのように、一口、二口すする。

 胡麻だれのようなツユは、遠くの方に酸っぱさを感じる微妙な味で、それを楽しんだアトに、別皿の具を、適当に載せ、混ぜながら、冷やし中華らしく食べるのだ。

 どのように食べても良いのだが、羽衣の涼麺は、これが楽しい食べ方だと思っている。

 他の店の冷やし中華の具材とことなり、種類は少ないが、それぞれが大きいのも、羽衣の特徴だ…とにかく、他店とは違う食感が楽しめる。

 昔、この店の主人が、中華料理は、中国の地方により味が異なる。それをそのままでも良いが、日本で食べるなら、日本人が好む味の方が良い「ウチは日本の中華料理だ」と、言っていたような記憶がある。

 いずれにしても、日本に同化した羽衣の料理は、どれを食べても美味しいから、安心して注文出来る。

写真:大好きな牛餡掛け炒飯。

 日本人の口に合うように、調理されているからなのだろうか、それともコックの腕が良いのだろうか。