何度か通って顔見知りになった、門前仲町の軍鶏鍋屋・有明の親方が「鳥鍋好きそうだネ神田の鳥ぼたん知ってる」もちろん「知ってる」と答えたが。

 今日は、その鳥ぼたん…処は神田須田町。近所には、藪そば、蕎の神田まつや、おしるこ竹むら、鮟鱇鍋の伊勢源など、老舗がゴロゴロ。

 で、伊勢源と鳥ぼたんは、東京都認定歴史的建造物で、昭和レトロは、眺めるだけで食欲が高揚する…関東大震災で焼けた伊勢源の建物は、昭和4年建築だ。

 鳥ぼたんの創業は、明治30年=1898年。私が子供の頃は当たり前だったが、今どき珍しい下足番がいて、急な階段を二階に上がり、座布団に座る。

 ピカピカに磨かれた銅天板の箱に収まる、備長炭の七輪がはこばれて、準備完了…昔ながらの鉄鍋に、肉と具を、手際よく仲居さんが並べてくれる。

 割り下は、下町流で少し濃いめだが、途中の補給用で薄いのもあるから、好みに調節可能である。

 聞けば、鶏肉は千葉の錦爽鶏。葱は太くて甘い千住葱。細めの白滝と薄切りの焼豆腐は、鳥ぼたん特注の品らしい。

 頃合をはかって「そろそろ食べごろですよ」と仲居が教えてくれた…そのあと、つくねや追加の具は、自分でだが、やってくれるときもある。敬老精神なのだろうか。

 鳥スキ焼き9000円は、晴れの日という食べ物かもしれないが、とにかく旨い…最後の〆は、残った汁を、ゴ飯に掛けて良し、おじやにして良し、+500円で親子丼セットにしても良し、である…私は、いつも親子丼だ。

 最後に、仲居がむいてくれた、デザートの蜜柑が、皮が薄くて甘いこと、絶品だった。

 コロナ禍が始まって、以来ご無沙汰だが、最近は行列店になったようだから、予約がベターだ。

 また、外国人客が増えたようで、テーブル席も出来たようだ。