鰐を食べたなどとウカツに言うと、嫌われるかもしれない。

 が、10年以上も前に、バンコクで食べたことがある。

  それは、中国料理によくある、真ん中に煙突がある鍋でだが、こいつはタイすきでも使うから、珍しいものでもない。

 その時は鶏肉や野菜なんかと一緒に煮て食べた…まずくはないが、それほど旨いとは思わなかったから、その後食べたことはない。

 今回は、同じワニでも焼いたもの…言うなれば、ワニのバービキューである。

 小さなワニだが、一匹を丸ごと、魚の干物のように開きにしてから、口から尻尾までを串をさして、というよりは、鉄パイプで貫いて、炭火の上で、グルグルと回し、客が来れば、カットして、今度はブロックを本格的に、炭火と網でバービキューするのだ。

写真:グルグル回るワニの開き/下はカットした肉を炭火でバービキュー

 焼いた肉のブロックは、包丁でキレイに捌いて、底に敷いた細切りキャベツの上に、並べてパックしてくれる。

 パックには、二種類のタレが入っているので、それを付けながら、ということになる。

写真:S=199・M=299・L=499バーツ/下は我々が食べたSパック(1バーツ=約4円)。

 口に入れると柔らかく、簡単にカミ切れる…ゴツイ革から想像するのとは、マ逆でビックリだが、グロテスクな姿からは、想像も付かない淡泊な味で、二度ビックリ。

 感じとしては、鶏のササミのような感触で、味も鶏に似ているという説明で良いのかな。

 いずれにしても、柔らかくて、美味しい食べ物である。

 鰐を食べたのは、バンコクで自動車ショーの取材を終えてから、少々のんびりしようじゃないかと、食いしん坊の松下さんと、カメラマンの諸星さんと三人で出かけた観光地、パタヤだった。

 バンコクから、車で2時間程…ホテルから散歩がてらに出かけたら、数分のところの野外広場に小屋がたくさん…夜になると、コウコウと裸電球が点いた、屋台村のようなところで、ワニを売る小屋があった。

写真:屋台に囲まれた席で好物を食べる/下は果物屋台。

 屋台村は、食べる物は何でもありで、串に刺した肉、魚や海老、蟹、貝、また果物、飲み物など、なんでも手当たり次第だ…屋外のフードコートと言ったら良いだろう。

写真:串焼屋台=焼き鳥屋風。

写真:魚屋台/塩を振り焼いてくれる/どの店も炭火焼き。

 夜の営業だから、海岸っぺりらしい海風のせいで暑くはないが、そこら中の屋台が炭火だから、涼しいはずもない。

 でも、旅の夜の夕食としては、楽しい想い出となった。

写真:既に客の胃袋に入った後のワニの頭を陳列。