鰻は、長年日本で楽しまれてきた食べ物だが、日本料理を世界中が食べるようになって、また近年しらす鰻の不漁で、値段が高騰している。

 鰻が好物という連中には、嫌な世の中になったものだ… で、2月28日にブログで、安い鰻屋・豊洲市場の福せんを紹介したが、もっと安い鰻屋が見つかった。

 昨年、六本木で{うなぎ}と書いた幟=ノボリが、風にはためいていた…こんな所に鰻屋が?、と思ったが、旨くはなかろうと思い通り過ぎた。

 が、地元に知らない鰻屋があるのもシャクだと、年が変わって尋ねてみた…店の名は成瀬という。

 成瀬のメニューは単純明快で、見ればビックリ…梅=半匹で1600円・竹=四分の三匹で2200円。そして松=一匹で2600円。

 安すぎるので入店したのを後悔した。こんなに安くて、旨いはずがないと思ったのだ…が、坐ってしまったからには後の祭りと、松を注文した。

 15分ほどで届いた鰻重は、シッポがはみ出し、蓋が閉まりきらない…蓋を取ると、巾ひろく厚い鰻が、半分ずつ重なっていた。

 昔は大串と呼んだ、こんな鰻にお目にかかるのは、久しぶりだった…でも旨いはずがないと、まだ心の中では、格安値段が尾を引いていた。

 でも、一口食べて、悪くないぞ、と感心…全体に少し焦げているのは、香ばしさを出すためなのだろう、職人の腕の悪さではなさそうだ。

 麻布飯倉の野田岩ほどの柔らかさはないが、かなりよく蒸されて、内側の皮も割り箸で軽く切れるほど。

 開店したばかりだから、タレは駄目だろうと思ったら、さにあらず…年月を経たコクは望むべくもないが、かなりレベルは高い。

 生姜や瓜の漬け物も、食べれば、これもありだと思った。ワサビは、一流店でも滅多に付いてこないから、これは嬉しい。葱が付いているのには、首をかしげたが。

 結論は、コストが安い中国での養殖鰻だろうが、ISO表示があった…たぶん養殖場・加工場に日本人が出向・監督したのだろうから、心配不要だろう…浅草の安い鰻屋、九寅でも同じようなことを言っていた。

 明るく笑顔の中国人従業員というのも珍しく、一瞬とまどってしまった。

写真:浅草の廉価鰻屋・九寅。

 旨くて安い、いや格安鰻の成瀬、こいつは思わぬ出会いだった…再訪する気になっている。