「大きいことは良いことだ」のCFに載るかのように、膨らみきったバブルがはじけて、大型車志向もはじけ、乗用車のダウンサイジングが始まった。

 大型から中型、中型は小型え、さらに軽自動車に移る人も出てきた…それまで軽は、お金のない人か、商売用だった。

 が、裕福ユーザーの眼が軽に移れば、メーカーは対応せざるを得ない…で、最上級グレードの、高級化が始まった。

 もう一つ、軽の難点は、キャビンがキュウクツということだった。それを解決して、軽市場に新ジャンルを創生したのが、スズキのワゴンR…1993年のことだった。

写真:高さで稼いだキャビンの広さを強調するワゴンR/自動車ショー会場で。

 

 いわゆるトールワゴン、ハイトワゴンと呼ばれる背を高めたものだが、人気が出れば、後追い続々というのが世の常…

スズキのライバル、ダイハツからムーブが登場したのは、1995年だった。

写真:初代ムーブ/1995年。

 初代ムーブの初試乗で感じたのは、丁寧な造り込みだった…上級モデルならパワーステアリング、パワーウインドー、エアコンも装備していた。

 ムーブは、その後も代を重ねて、2014年には、六代目になった。

 木更津の、かずさアカデミアパークでの試乗会で、六代目の出来の良さに感心した…ふつう開発順序は、安いベースモデルからだが、六代目はカスタムから始めたという、力作だった。

写真:ムーブ・豪華立派なカスタムとスタンダード。

 如何にも金を掛けた感じで、走れば、しなやかな乗り味は軽で初めて…小型登録車の底辺車種と比較なら、小型車クソ喰らえという感じだった。

 いざ加速という時の、面白い仕掛けがあった…ハンドルスポークの、右はじPWRボタンを押すと、一瞬加速して追いこし完了…エコ時代に、アクセルを踏みたしする罪悪感を忘れることができた。

 安全対策も最先端。低速時衝突回避・先行車発進通告・先方/後方誤発信制御など充実していた。

 このようにベタぼめすると、ナンダこいつ、ということになりそうだが、それで私の自動車人生が転機を迎えた。

 それまでオ気に入りの{小さな高級車}と呼ばれたプログレから、ダイハツムーブ・カスタムに乗換の決心をした。

写真:小さな高級車プログレからムーブカスタムへ。

 サスペンションが硬いターボではなく、乗り心地がよいNAを撰んだが、高速道路での追いこしに少々不満があったが、快調だった。

 欠点といえば、荷室が小さいことだけで、実走燃費が22.0km/ℓで大いに満足…が、20年前の初代ムーブの実走燃費が11.9km/ℓだったことを考えると、進化のほどにも感激である。

 全長と全幅が規制で決められた中で、進化を続ける軽自動車、何処まで進化するのだろうか?興味が湧いてくる。